日経MJ シニアBIZ なるほどスマート・エイジング

その脳トレ 効きますか? シニア消費「質」でつかむ

健康増進効果をうたった商品・サービスが市場で急増している。背景には高齢化率が28%を超えた「超々高齢社会」になったことに加え、「人生100年時代」という見方が広がり、消費者の健康志向がますます強まっていることがある。

とりわけ認知症予防に対するニーズの高まりから「脳を鍛える」ことをうたうサービスが増えている。東北大学が民間企業と開発した学習療法は認知症の症状改善に大きな成果を上げており、国内1800の介護施設・自治体で毎月平均1万5000人が利用。米国でも10の州、27施設で利用されている。症状改善に有効とのデータが米国の老年学会誌をはじめ多くの著名学会誌に掲載されている。

一方で、「脳トレ」や「認知症予防プログラム」といった類の商品・サービスには本当に有効なものが少ないのが現状だ。この理由は、効果検証が不十分にも関わらず商品化しているものが多いことに加え、商品提供者自身、効果検証に関する理解が浅いことがある。

脳を鍛える原理も科学的エビデンス(根拠)の有無やその信ぴょう性のレベルも理解しないまま、消費者に提供するという例が多い。

米国ではLumosityという脳トレプログラムに効果が見られないため、監督当局である米連邦取引委員会が200万ドル(約2億2000万円)の罰金を命じた。

これは米国の例だが、日本でもこれからは効果のエビデンスなしに、その商品が「健康によい」などとは言えなくなるだろう。日本でも今後は当局による罰則リスクが大きくなる可能性がある。

だがそれ以上に重要なのは、シニア消費者の商品を見定める目がますます肥えている事実だ。消費者自体がエビデンスの有無やその信ぴょう性を求めるようになる。高齢者が「スマート・シニア(情報武装した賢い高齢者)」になっていく。

人生の後半期には「健康不安」「経済不安」「孤独不安」の「3K不安」が強くなる。経済不安になる理由は、病気になって入院し、治療が長引けばお金がかかるから。孤独不安は、健康を害し外出しづらくなるとほかの人とのコミュニケーションが減るから生じる。

したがって、人生の後半期には3K不安を解消しようと「スマート・エイジング」、歳を重ねることによる体と心の変化に賢く対処し、知的に成熟する生き方にシフトしていく。

私たち東北大学では、これまでの医学、心理学、社会学などの知見を統合して、スマート・エイジング実現のためには「運動」「認知」「栄養」「社会性」の4つの条件が満たされる必要があると結論づけた。

情報武装したスマート・シニアは、「スマート・エイジング」の4条件を満足するための商品・サービスを求めている。したがって、商品提供側がスマート・エイジングを正しく理解していなければ、消費のチャンスをつかめない。

逆に言えば、それができる企業が超々高齢社会、人生100年時代のシニア消費をつかむことができる。そのためには、スマート・シニアが求めるこの4条件を「意図的に」商品・サービスに組み込むことが重要だ。

 

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