SAカレッジ22年度 コースⅠ第11回月例会は、鈴木岩弓 名誉教授です!

宗教民俗学的視座からの死生学研究者

SAカレッジ22年度 コースⅠ第11回月例会は、 鈴木岩弓 名誉教授 「日本人の死生観 ―過去・現在・未来―」です。
超高齢社会における看護・介護やシニアビジネスを行う上で、私たち日本人の「死生観」がどのようなものであるかの理解が不可欠です。
「死生観」というのは観念の問題であるため、目で見ることができません。従って、講義では観念に基づいて執り行われる行為、特に死者に対してなされる「葬送習俗」を次の構成でお話しすることで死生観のイメージを深めていきます。

  1. はじめに
  2. 現代日本の「死」の状況
  3. 「死者」とは誰か?
  4. 「死者」と「生者」の接点
  5. 死後の「死者」—「死者」への“想い”—
  6. 人称からみた「死者」の記憶

主なご研究について

鈴木先生の研究に関するキーワードとして下記があげられます。

東北地方の「骨葬」習俗、臨床宗教師、東日本大震災の土葬選択、死者観念、東日本大震災にみる土葬の復活、山寺と死者供養、与半跏趺坐地蔵像有关的民間信仰、柳田國男と仙台

主な研究内容について一部ご紹介します。

  • 現代日本における「死のケア」のための異分野融合研究
    本研究では、超高齢多死社会の現代日本における「死」への対処を、現場に即した「ケア」のあり方に注目して検討した。その際にはとりわけ、人文社会科学的基盤に立つメンバーと、看護学的基盤に立つメンバーの異なるディシプリンによる観点の違いに留意し、その点の相互理解をする中から、「死のケア」への新たな道実現の要点を考察した。
    本研究の成果報告書として、『現代日本における『死のケア』のための異分野融合研究』を刊行した。
  • 現代日本の葬送墓制をめぐる<個>と<群>の相克-東日本大震災を見据えて-
    近年の日本の葬送墓制は、変動の中で大きく揺れ動いている。一方では都市化の進行で<個>の重視に拍車がかかっているのに対し、他方で血縁・地縁・社縁といった伝統的な絆による<群>の論理も併行して存続しており、<個>と<群>の微妙な力学の中に現代人の葬送墓制がおかれているからである。本研究ではわが国葬者のかかわりの動態メカニズムをディシプリン横断的に解明する。
  • わが国葬送墓制の現代的変化に関する実証的研究-<個>と<群>の相克-
    「墓制班」は東京下町の近世から続く寺院墓地と前年度から始めている大阪府内の公営墓地「大阪南霊園」の墓石悉皆調査を実施した。前者に関しては震災後の影響もあってなかなか協力の得られる寺院が見つからず、対象を川を挟んだ対岸の千葉県に移して検討することにした。その結果千葉県松戸市の自在院から協力の申し出をいただくことができ、夏休みから谷川・朽木両先生の指示のもと悉皆調査を開始した。また大阪南霊園の悉皆調査についても、槇村先生が中心となって昨年度に続く悉皆調査に着手した。ただし、両墓地とも墓石数が多く、完成は次年度に持ち越すこととなった。
    翌24年度は、本研究課題の最終年度に相当するため、国際シンポジウムでその成果を発表した。そのため、全体会を中心に準備作業に着手した。その結果、中国・韓国・台湾から研究者を招請し、7月に大正大学を会場に国立歴史民俗博物館との共催という形で実施した
  • 東南アジア多民族都市社会における死生観の動態に関する宗教学的研究
    1. 儀礼班の目的は、バタック人の死に関わる儀礼の場面において行われるさまざまな会話や口頭的表現に注目し、都市社会における死生観の動態を把握しようというものであった。しかし研究の過程で、彼らが定期的に催している祈祷会の重要性に気付き、そこに見られる祈りや説教などの口頭的表現にも研究の範囲を広げた。その結果、そこで語られる「死」が、語り手の死者との社会的距離や死の出来事からの時間的距離に応じて多様なニュアンスをもち、その多様な「死生観」の間でダイナミズムがみられることがわかった。これらの成果は成果報告書の中にまとめたほか、今後学会、雑誌等において発表していく予定である。
    2. 宗教材調査班では、オランダ時代からの墓地を整理した「タマン・プラサスティ」に集められている墓碑銘の整理を、前年度に引き続いて実施した。その結果この施設には、17世紀末以降の墓碑銘が1,000基ほど集められていることが明らかになった。それらの中には故人に対する想いのつづられた文章が書かれていることもしばしばあり、それらの分析を報告書にまとめた。
  • 死者と追悼をめぐる意識変化-葬送と墓についての統合的研究-
    助成金を受けたこの三年間は、いずれも(1)共同研究と(2)個人研究の二本立ての研究を関連づける方向から、年内に3、4回の研究会と共同調査を開催して実施した。
    (1)共同調査 (1)「死者と追悼に関する現代人の意識調査」
    (2)「摩文仁の丘」慰霊碑群調査 (2)個人研究
    鈴木は「骨葬」や「遺影を飾る習俗」に着目し、モンゴルやインドネシアの事例とも比較する中から、東北地方を主な対象としたアンケート調査を実施した。孝本は特攻隊の慰霊碑調査を継続的の実施し、年度内に完了した。栗原はこれまで全国の有名な大名の墓の調査を行ってきたが、本プロジェクト実施の中でほぼ完了し、その成果を公刊した。森は官報を手がかりとした無縁墳墓の改葬実態に関する調査を継続し、槇村は家族変化の観点に近代化・都市化の問題を絡めて、墓制に見られる共通パターンの抽出を目指した調査を実施した。また新谷は奈良県に見られる郷墓の実態調査を継続し、谷川は近世考古学の立場から江戸市中に見られる村落における墓地の発掘調査を、村上は井下清の霊園造営思想に関する文献学的研究を、山田は岩手県の事例を手がかりに遺影祭祀の実態調査を、そして土居は新宗教教団における戦没者慰霊の実態調査を、主に金光教を事例に調査した。
    なお、このプロジェクトの成果は、メンバー全員の参加の下、3月末に開催の国際宗教学会でシンポジウムとして発表された。
  • 墓の変化からみた現代人の死生観の展開
    本年度の研究では、仙台市内における墓地状況の実態調査を中心に、そこから派生した問題に関する他地域での資料収集、そしてまた墓制研究の実態把握の意味からのデータベースづくりの三つの柱を立て、それら個別課題の成果を統合することで当初目的を達成するよう実施した。
    1) 仙台市内の墓地状況の実態調査
    仙台市内の市営墓地と民営墓地、そしてまた寺院墓地・部落有墓地の典型的事例を青葉区と泉区の中から10カ所ほど集めて墓石調査を実施した。またさらに、キリスト教墓地も二カ所選んで墓石調査を行った。
    2) 他地域での資料収集
    仙台市内の墓地調査を進める中から、特に「墓相」に基づく造墓行動が見られることに気づき、その点の資料収集のため、京都への出張を行った。
    また合祀墓の模索も行われていることから、横浜etc.の新たな合祀墓を進めている地域へ出向き、その資料を収集した。
    3) 墓制関係文献データベースの作成
    墓制へのアプローチは、さまざまな領域からの学術研究のみならず、「お墓ウォッチング」的な関心からの、また実用書的なガイドとしての文献が数多く出版されている。今回はその両者をできる限り網羅すべく網を打ち、墓制に関する総合的な文献データベースを作成した。
  • 「流行神」の形成とその展開に関する実証的研究ー中国地方の事例を中心にー
    実施する以前から所在を把握している「流行神」については、以下のようである。
    (1)「首無地蔵」に関しては地蔵のある広島県府中市での実態調査に加え遠隔地からの参詣者に対する聞き取り調査を中心に実態把握を行なった。特に滋賀県からは、宗教者の入らない俗人だけの緩やかな組織を形成しながら集団で参詣していることが明らかになり、「流行神」信仰形成を考察する上での重要なポイントであることが指摘できた。
    (2)「横樋観音」に関しては信者の台帳分析により信仰圈や祈願内容の把握ができた。その結果、「首無地蔵」と比較して狭い信仰圈をもつことが明らかになったが、その大きな理由として仏像出現初期におけるマスコミの関わりが希薄で、主にパーソナル・コミュニケーションによる情報伝達がなされた点が指摘できた。また「首無地蔵」と同様に聞き取り調査を中心に実態把握を行ない「流行神」信仰形成を考察する上での重要なポイントであることも指摘できた。
    (3)「幸運仏」・「白玉龍神」・「緋鯉地蔵」・「幸魂様」については資料収集が未完了であるが、現段階の資料からは、出現初期におけるマスコミの関わりの程度が、〈流行り〉の度合いに関連することが推定される。
    (4)前年度後半から実施している文献に現れた「流行神」に関する記述の収集は、とりわけ近世に書かれた随筆を集大成した「日本随筆大成」を中心とした分析を、当該地域の地誌関係の書物の分析の二本立てで実施しており、その結果の一部は日本宗教学会において「金石の随筆に見られる流行」の題名のもと、口頭発表した。このような資料の分析は年度内の完了が難しいため引き続き次年度以降の課題となるが、現代の「流行神」の形成初期の問題や、また「流行神」信仰の展開する方向の類型化を行なう上で、大きな力になるものと思われる。

紹介ページ

東北大学 大学院文学研究科 教員のよこがお

世界一受けたい授業 「家族で考えたい終活!トラブルにならないお墓の新常識」

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