SAC東京コースⅡ第6回月例会 事務局レポート
9月21日開催 SAC東京コースⅡ第6回月例会 事務局レポート
「あらためまして、皆さんご承知のシニアビジネスのパイオニア村田裕之特任教授の登壇です」の紹介のもと、我らのボスの登場です。
「皆さんこんにちは、今日のタイトルはシニアビジネスの新潮流と今後の展開です。一言で言えば新しい動きの中、今後何をするべきかです」と小気味よく講義が開始されました。
シニアビジネスに限らず新規ビジネスの多くはアメリカからやってくる
1. ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)
2. シェアリング・エコノミー
3.CCRC
と.現状分析です。
アメリカ市場動向は日本市場の「半歩先の鏡」
1. 数年後に日本でも起きる可能性大=日本の近未来が予想できる
2. しかし、アメリカで成功したものが日本で成功するとは限らない
3. 日本での成功のためには「日本独自」の工夫が不可欠
取り組む市場の紹介として「ドーナツ事例」が語られます。身近な事例はとても分かりやすく、参加者を笑わせます。
シェアリング・エコノミーとは?
1.「シェアリング・エコノミー」とは、個人保有の遊休資産(スキルのような無形資産も含む)の貸し出しの仲介サービスによる経済活動の総称
2.貸主は遊休資産活用による収入メリット、借主は所有なしに利用できるメリット
3.貸し借りが成立するためには、信頼関係の担保が必要
4.ソーシャルメディア活用による緩やかなコミュニティ機能の活用が多い
法律の規制がない分、どこまで守り、どこまで信じるかなのです。日本独自の工夫はどうしたら良いのでしょう。生真面目な日本人にはなかなか展開できないようですが、その真面目さを活かしたいのです。
シニア向けサービスで10年前からある例
1.Seniors Home Exchange (アメリカ)
2.ITN America (アメリカ)
3.私の夫、貸します(ロシア) ━ 一般の人がシニア宅で力作業をサポート
寄付文化のアメリカは、収入の多くは広告と寄付に依存しているそうです。これを日本型にしていくのはどうしたら良いのでしょうか。最近ではボランティア活動もずいぶん活発になってきましたが、「何かあったらどうするの病」の日本人に何時からなってしまったのでしょうか。
最近の例:ネット、スマホの発達・普及で出現
Airbnb (アメリカ):個人宅の空き部屋をシェア
日本の民泊のような活動は、世界遺産に近い地方都市に多いそうです。地方の活性化のためには良いことです。旅館業からの反対もあるようですが、東京オリンピックを機に変化していくことが予測されます。また、ホストには60歳以上の年配者が人気です。ここにシニアビジネスのヒントが見えてきました。
Uber (アメリカ):個人の自動車をシェア
日本では自ら事業を行わず、仕組みを提供しているのみだそうです。元気なシニアが足の悪いシニアを支えている雪の多い京都府京丹後市の事例が紹介されました。この「支え合い交通」の仕組みができるまで、タクシー業界の反発があったようです。
Akippa (日本):個人の空き駐車場をシェア
この領域は日本人にも抵抗感が少ないのでしょう。個人・企業の空き駐車場のシェアの普及は進んでいるようです。
Any+Times (日本):個人の労働力をシェア(家事代行仲介サービス)
20~30歳代の子育て時代にとって助かる「家事代行」です。40~50歳代のサポーターが活躍しますが、自宅に他人が入ることを嫌がる日本人には、介護サービスさえも導入できない現状の考え方が「壁」となっているようです。家のことは「主婦の役目」として考える人には「他人の世話になること」が難しいことなのです。
なぜ、今、シニア向けシェアリング・エコノミーなのか?
社会の高齢化進展(シニアシフト)
1.将来不安(健康・経済・孤独の不安)の増加
2.移動手段の需要増大
3.空き家・空き部屋の増加
4.長寿化による就業意欲の増加
収入が減る高齢者です。日常の出費を抑え、資産は減らしたくありません。ましてや、稼げるものなら副収入を得たいと考えています。しかし、その手段を開拓できる力は持っていないことが多いのです。大きなヒントが見えています。
シニア向けシェアリング・エコノミーの壁は?
もともとご近所付き合いをしてきた日本人ですが、近年、隣近所の関係は遠くなってしまいました。その分ネットの活用が進んできて、新たな関係性構築の仕方が広がってきました。アメリカに比べればまだ低い日本のシニアの利用度ですが、10年先を見越すとネット利用率の増大には説得力があります。この変化を先読みする力が必要です。個人の価値観を含め、海外・国内の利用したくない理由に「なるほど・・・」とうなずく参加者たちでした。
企業はシェアリング・エコノミーにどう向き合うべきか?
シニアの遊休資産活用を支援
1. 自宅・空き部屋の活用
2. 家の屋根スペースの活用
3. 土地活用
4. 労働力
できそうなことがたくさん紹介されました。しかし、まだほんの一部であり、拡大するには何が必要になのでしょう。これをSAC東京の仲間たちと膨らませていこうではありませんか。
企業の遊休資産をシニア向けに活用
1. 土地
2. 保養寮
3. 退職者OB
4. その他活用できる遊休資産
退職者OBの活かし方はSAC東京コースⅠの分科会テーマとしても取り上げられています。活用できそうなアイデアはいっぱいあります。それにどう向き合い、行動していくのかが遠い話題ではなく、身近なミッションに感じてワクワクしたのは私だけではなかったと思います。
CCRCの正しい理解と日本の進むべき道
CCRCとは何か?
1.Continuing Care Retirement Community の略
2. 日本語では「継続介護付き引退者向けコミュニティ」
3. 同一敷地内に「自立者向け住宅(Independent Living)」、「介助付き住宅(Assisted Living)」、「介護施設(Skilled Nursing Home)」+共用施設が存在
4.元気なうちに入居一時金を払って入居すると、介助・介護が必要になっても追加費用不 要で住み続けることができる
「公的介護保険制度のない」アメリカのシステムが、初期の有料老人ホームに詳しく理解されないままに導入されたのでしょうか。日本の老人ホームは介護の量が増えることで介護報酬がアップします。その考え方が「介護度の改善に本気にならない」日本の高齢者福祉の問題と重なってきました。日本でも追加費用が請求できないのであれば、施設側は必死に「予防・改善」に励むところが増えそうです。
直近10年間、高齢者は増加したがCCRCは減少したアメリカ
1.直近10年間、65歳以上人口は1,000万人増加(ベビーブーマーが仲間入り)
2. だが、CCRC数は減少=リーマンショック後、開発件数が激減
3. 他社による買収が増加=経営効率の流れ
アメリカの高齢化・高齢者住宅の最新動向とその考え方がまとめられました。
そもそもアメリカ人がCCRCに入居する理由は?
1. 孤立予防
・広い国土=車が運転できないと生活できない
・核家族・独立志向=子供は老親の面倒をみない
2. ライフモデル
・入居一時金を支払い、元気なうちに入居すれば、要介護になっても追加費用なく、同一敷地内に住み続けられる
・民間による介護保険機能=アメリカ固有の価値
公的介護保険がある日本は根本的にアメリカとは異なります。まして、アメリカでもCCRCに入居できるのは資産・所得のある中流以上の人のみなのです。
アメリカ動向まとめ
1. ベビーブーマーが高齢者の仲間入り、高齢者数が急増している
2. ベビーブーマーはこれまでの高齢者ほど金がないため、CCRCに入居できる割合は減る
3. CCRC数は過去10年間で減少、競争が激化。今後一層選別・整理されていく
4. CCRCは経営効率化・コスト削減で価格を下げないとベビーブーマーの選択肢にならない
ここに3年後の日本が見えてくるような気配です。
アジアの高齢化・高齢者住宅の最新動向
シニアビジネス市場が広がる条件は「所得レベルの向上」と「社会の高齢化進展」です。日本より少子化が進んでいる一部アジア諸国ではこの高齢化が今後急速に進みます。シンガポールは政府が必死に日本を研究しています。香港に登場した高級CCRCは10年前の日本の状況と似ているようです。中国ではごく一部の富裕層のみが入居対象だそうです。
アジア動向まとめ
1. 所得水準が高いシンガポール、香港は少子化が進み、高齢化に対する危機感が強い
2. シンガポールは日本をよく研究し、既存HDBを含む継続ケアの仕組み、介護予防に注力しつつある
3. 香港は民間主導だが、経験不足で15年前の日本と似た状況
4. その他の地域(タイ、インドネシア、フィリピン等)でもCCRC設立の動きがあるが、アメリカ型をそのまま導入したのみで、どれも苦戦中
これは、過去の日本の状況に似ているようです。この15年で日本は学びました。
日本は海外の動向から何を学ぶべきか?
1. アメリカの動向から・・・ここにヒントが見えてきます
・近未来の予想
・先回りの対策
2.アジアの動向から・・・時間差ビジネスが提案できそう
・過去の再現の予測
・経験をもとにしたビジネス
日本が進む先回り事業戦略を講義する村田特任教授がアメリカ人に見えてくる一方、ふるさと新潟の両親の話しが3回も登場した雪国生まれの日本男児でした。成功事例は常に個性的であると強い言葉で講義は終了します。
海外の事例に学びつつ、猿真似をするのではなく、独自の差別化を考える。講義最後のメッセージを我々参加者で深めていきましょう。
【個別質疑】 (質疑のみ掲載)
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Q1.日本のCCRCがうまくいくためのヒントは?
Q2.CCRCの定義をもう一度?
Q3.日本人のシェアリング・エコノミー型サービスへの抵抗感の理由はなぜ?
【パネルトークタイム】
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参加者代表の3名と村田特任教授によるパネルトークです。自己紹介、企業紹介に続いて教授への質問と回答が繰り広げられました。会場とのやり取りを含めて講義内容が深まっていきます。
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Q1.シェアリング・エコノミーでは、企業はどう関わっているのですか?
Q2.アメリカのCCRCがつまずいた理由は?
Q3.シェアリング・エコノミーの投資というシニアのモチベーションが働きますか?
Q4.今後、アメリカで増える住宅のタイプは?
Q5.アシストリビングはどういう形で開発すると良いのでしょうか?
Q6.介護保険サービス以外の抵抗感を、どうビジネスサイクルに展開するのか?
Q7.今後のCCRCなどは、個性・軸は何にしたらよいのか?
Q8.住まい手の価値観は?
Q9.ビジネスの可能性は?
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質問に答えながら村田特任教授の講義が深まっていきました。参加者からもたくさんの意見が出ます。アシストリビングだけでは利用する人がいないこと。新しいことに価値を見出してもらうには「営業の土俵を変える、営業チャンネルを変える」必要性。国民性、背景を捉えて考えること。人生を支える仕組みを我々はどのようにプロデュースするか。地域の売りを大切に・・・「日本は宅配も進んでいます。支え方次第ですよね」というたくさんのヒントに、ビジネスチャンスがひらめいた参加者も多かったようでした。
(文責)SAC東京事務局
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タグ:シニアビジネス, スマート・エイジング・カレッジ, 加齢医学研究所, 村田裕之, 超高齢社会
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