SAC東京2期 コースⅠ第1回月例会 事務局レポート

4月15日開催 SAC東京コースⅠ第1回月例会 事務局レポート

blog160415sac1-1-1

SAC東京第2期コースⅠは、開始時間前には全員が集合し、各グループでの自主的な名刺交換・情報交流が進むというやる気満々の雰囲気で開講しました。

主催者を代表した村田特任教授の開講の挨拶では、本カレッジのコンセプトとスマート・エイジングの紹介がなされ「この学びに参加できることは幸運であり、自身の事業の観点から咀嚼し、展開して、ビジネスチャンスへつなげていきましょう」の言葉に参加者が目を輝かせている様子に、これからの一年間への期待の大きさを感じました。

第1回の講師である川島教授の紹介では、「任天堂DS」「脳トレ」「学習療法」などの聞きなれた言葉が出るたびに大きくうなずく方も多く、川島教授の講義を心待ちにしている様子が伝わってきました。 

そして、コースⅠ第1回月例会の講義が始まりました。講師は東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授です。まずは東北大学の紹介です。「東北大学のある場所は青森ではありません」と、緊張気味の参加者たちを笑わせて心をつかんでいきました。

仙台は研究や勉学に最適な環境であり、かのアインシュタインが「仙台は学術研究にもっとも適した都市であり、恐るべき競争相手は東北大学である。」と述べたと伝えられていることを、今年も新入生の入学式で自慢したなどの話に笑いが溢れます。

blog160415sac1-1-2創立73年の歴史がある加齢医学研究所は、複雑なヒトのエイジングのしくみを、分子生物学的手法を用いた遺伝子や細胞の研究から、動物実験による個体レベルの研究、さらにヒトを直接の対象とした研究まで、多階層的な医学研究を包括的に扱っている世界でも有数の研究所であること、エイジング研究とは単なる老化ではなく、生まれてから死に至るまでの「人生そのもの」の研究であることが紹介されました。

大学の理念である「研究第一主義」は、たくさんのラボを持つことでも明らかです。 「実学尊重」机上の空論を振りかざさないと、世界をリードする東北大学卒業生の実績が紹介されました。また「門戸開放」として東北帝国大学時代に国立大学として初の3人の女子学生を受け入れた話では、参加女性陣が嬉しそうに微笑んでいました。

「こんな知恵が欲しいをもっている大学です」と、高校教師による大学ランキング総合評価1位でもあり、入学後に伸びる大学であることも誇らしく語られました。

そして、産学連携件数は民間企業との共同研究実施数が831件中の国内大学第4位であり、世界に広がるネットワークとしてアメリカや中国にもオフィスを持ち、世界から東北大学への抱負も力強く語られていきます。加齢医学研究所のミッションは、医学分野全体として「超高齢化やグローバル化に対応した人材育成や、医療イノベーションの創出により、健康長寿社会の実現に寄与する観点から機能強化を図る」ことです。

健康長寿社会をつくるために「医工連携や加齢医学等の融合研究、大規模コホート研究による新たな医療創出と地域医療の復興への貢献として世界をリードする拠点」を目指します。

三本の柱

・加齢と生体防御機構の分子メカニズム ・・・なぜ亡くなるのか?
・発がんとがん増殖の分子メカニズム  ・・・何がきっかけで発するのか?
・脳の発達と老化のメカニズム     ・・・認知症にならないための研究

「まさしくこれ」であると教授の声のトーンが上がり「病気になってからでは遅い」治療ではなく、個の生存、病気にしないこと・ならないことを解明していると語られます。

医工学研究は40年前から始まっていますが今年度よりさらに深化していきます。 かつて心臓の超音波検査は東北大学から生まれ、今後数年の間には人工心臓が日本作品として認められることへの期待は、「下町ロケット」に勇気を得た企業戦士たちのハートをくすぐった様子でした。動物実験で安全性を評価するためのヤギを用いた実験の世界標準が整い「お安く協力できますよ」の言葉にも笑いと期待が生まれます。

新しいものを作りだし認めてもらうにはエビデンスが求められることを日ごろから強く感じているのでしょう。ビジネスチャンスに光が差したような参加者の表情も見られました。 それにしても動物実験自体が認められている大学の少なさには驚きました。

大学には知識と技術はありますとエイジング・サイエンスの話にテンポよく進みます。

哲学、死生学、どう生きるか。
臨床宗教学、宗教も学問としてとらえる。
日本学、日本とは?日本人とは?

そしてグローバル化にむけてどう生きるか?をもくろむ・・・・・など、聞いたこともない言葉の連続に脳が処理できなくなってくるのを感じたのは私だけでしょうか。

遺伝要因と環境要因がどう交わるのかを例題でわかりやすく話してくれました。運動すると身体も良くなること。脳の運動が認知症の予防になることにはうなずく人が大勢いました。

元気になった高齢者が社会の中で活躍するまでを研究することでのスマート・エイジングの実現が最終目標であるとの構想へと進み、安らかな老いと死の実現を目指す実証・実践的死生学の開拓では、そのスイッチの入れ方で生き方や死に方が理想的になることを研究中であるという話は、参加者たちにとっても大きな期待となったようでした。

東北大学スマート・エイジング・カレッジ東京の受講生として誇らしさも感じた前半だったのではないでしょうか。

後半の講義スマート・エイジング概論では、企業に何ができるのか?大学の中に何があるのか?その両者がコラボして何ができるのか?の問いかけから始まりました。

超高齢社会への対応

日本の人口構成の変遷の中、今と同じでは無理

解決すべき三つの問題

1、個人の長寿化
2、人口の高齢化
3、地域の過疎化

知縁社会モデル

高齢者の能力を持ち上げると、学ぶ意欲が上がり、認知機能が上がり、生活の質も上る ことは実践研究で証明されている。

高齢者は向上した能力を持てあますようになるため、その出口を見つけることとして学童保育との連携を行った。そこでは老人も子供も同じ生徒の立場とする。そんな中、子 供たちが変化を始め挨拶ができる地域へ循環していった。

この子どもたちは地域の一員として成長し、地域を支え、高齢者も支える大人のなれる という「交流モデル」が分かりやすく講義されました。

こうした事業の持続可能性は担保できると予想され、それによって社会保障費は減少しその分をプロジェクトに投資する試算はできるが、経済性の問題があると講義は進んだ。

blog160415sac1-1-7スマート・エイジング

スマート・エイジングとは、エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること。高齢期でも知的成熟は続いていき、理想の死へむかう「生まれてか ら死ぬまでの人間の成長プロセスのこと」である。

従来は死への恐れから、歳をとることへのネガティブな考え方がされてきた。人として 退化していく「老化」のイメージであり、アンチエイジングは「人間の可能性をバカに した考え方であり、使いたくない」と教授は声を大きくした。

スマート・エイジングの思想

・加齢現象は成長であり、より賢くなることである
・加齢は何かを得ることである
・加齢は人間の発達である

を本学の立場とする。

5歳の子供が10歳になり成長したことを認めるように、90歳の老人が95歳になり成長したと言える社会を作りたいという内容に胸が熱くなりました。

講義は室町時代の世阿弥の世界へと入っていきます。

「時分の花」・・・・最初に咲く若さゆえの花
「まことの花」・・人生の苦の修業を積んだ者しか得られない花

どちらを選ぶ?どちらを選んでもらう?「決まっているよね」と、スマート・エイジングの考え方が浸みこんできます。

その定義、評価の枠組み、仙台でのスマート・エイジング・カレッジでは知的好奇心を喚起している事業や、座学講義を受けただけでも認知機能は上がること、作ったシステムを可視化させて企業協力もできることなども紹介されていきました。

身近なところにあるアンチ・スマート・エイジング

テレビやビデオは脳のリラクゼーション

脳の図を示して「皆さんの脳はね・・」と丁寧に説明が始まりました。脳科学のパイオニアの説明は、難しい解剖生理学を解りやすくひもといてくれました。

テレビを見ている時に活性化する領域と、抑制される領域を知りました。
前頭葉に抑制がかかり、リラックス時の反応と同じであること。
1.リラックス効果は得られるが・・
2.ずっとリラックスしていたら・・・・・

その時間が長い人は認知機能が低く、アルツハイマー型認知症になるリスクが高くなると、環境要因としてたくさんの例があげられました。

それを逆手に取って前頭前野を活性化する番組も開発しましたが「見ていて疲れるからあまり見たくないんです」と笑いも加えてくれます。 そして「やりようなんです」と、工夫することの大切さを示してくれました。

スマホを使う時間とテストの点数の関係へと講義は進み、スマホを使う側のものが脳の中の記憶情報を消すという解析結果に、受講生たちはドキドキしている様子でした。

寝不足でも寝過ぎでも成績が低下すること、LINEの音を聞くだけで集中力が低下することには思い当たる人が多かったのでしょう。

また朝ごはんを親子でキチンと摂ることが最も良い効果を表した仙台市教育委員会との協力プロジェクトや、授乳中の母親がスマホを見ながら授乳することでコミュニケーションの基礎が育たずに感情表現の下手な子どもに育ってしまう話では、うなずきながら自身の生活を振り返っているようでした。

最後に、「これらの事実を受け入れた上で解決策を創っていくのかがこのカレッジの役割です」と川島教授の力強い言葉で講義は終了しました。

【個別質疑】

Q1.テレビとゲームの影響力の違いは
Q2.テレビは脳のリラクゼーション、歳をとるとクールダウンに時間がかかるか
Q3.成績が下がることと、いじめやストレスの相互関係は
Q4.スマホではなくウィキペディアではどうか、デバイス特性は
Q5.スマホとラインに対してのスマート・エイジング・カレッジとしての方向性は

blog160415sac1-1-3 blog160415sac1-1-4

 

【グループトーク】

blog160415sac1-1-5 blog160415sac1-1-6

〈グループ6〉
Q1.眠りはスマート・エイジングにどのような影響をあたえるか
Q2.認知症になっての良いことは

〈グループ4〉
Q1.テレビ、スマホが本当に悪いのか
Q2.認知症が進むのは脳だけの問題か

〈グループ3〉
Q1.意欲の低下はなぜ起こるの
Q2.スマート・エイジング社会構造は

〈グループ1〉
Q1.スマホの便利、時間短縮、処理能力、情報を得るメリットは
Q2.楽しみながら脳機能を高めるには

〈グループ5〉
Q1.高齢者と子供に上下関係のない関わらせ方とは
Q2.映画は脳にどう影響するのか

〈グループ2〉
Q1.デバイスによる習熟度の違いは
Q2.経済性の持続力はお金の問題だけか

blog160415sac1-1-8 blog160415sac1-1-9

【名刺交換会】

第1回の月例会を終了し、名刺交換会へと会場を変えました。 初日にも関わらず賑やかに交流して下さった皆さんの脳は、きっといつも以上に活性化していたのでしょう。心地よいスタートが切れたことと思います。

blog160415sac1-1-10.jpg

大人になると学ぶ機会は自ら求めなければ得られません。「ワクワクしてきました」とこのカレッジへの期待を語ってくれた方が多かったことも嬉しかったです。一年間、どうぞよろしくお願いいたします。

以上

(文責)SAC東京事務局

第1期SAC東京月例会 事務局レポートはこちら

第1期SAC東京月例会 参加者の声はこちら

 

あわせて読みたい関連記事

サブコンテンツ

このページの先頭へ