SAC東京第2回月例会 事務局レポート

5月28日開催 SAC東京第2回月例会 事務局レポート

blog150601c第2回月例会は加齢医学研究所機能画像医学研究分野の瀧靖之教授による「生涯健康脳の維持」でした。

現在の認知症および予備軍は800万人もいると言われています。健康寿命は日常的に介護が不要の自立した生活が可能な期間のことです。すなわち健康寿命延伸のためには、要介護状態を作り出し、最終的には寝たきりとなってしまう原因の脳血管性障害、認知症のメカニズムを解明し予防していくことが重要である、そういう切り口で瀧教授は話しを展開されました。

脳の発達と加齢は表裏一体です。脳の発達は後ろから前に向かっていくそうです。まず子どもの脳は生きていくために必要な空間認知を司る後頭葉から成長が始まっていき、コミュニケーションを司る前頭葉へと向かいます。

言語野の発達は10歳がピーク。いくら私が頑張って英会話を勉強してもヒアリングやスピーキングが子どものようにうまく習得できないのはこの脳の仕組みによるものだということが分かりました。しかし外国語の習得そのものは脳の発達を促しています。
blog150601a睡眠障害症候群は海馬の発達に影響を与えます。よく寝る子は育つ、というように適切な睡眠は海馬の体積を増やします。糖分は血糖値の急激な上昇を促す食品だけに菓子パンだけを食べる食生活は問題があり、30分程度の運動だけでも脳の発達には効果があるということでした。このように睡眠、食生活、運動と「当たり前のことが重要」だと瀧教授は言い切りました。


一方、脳の加齢とともに脳の委縮がおこります。これには何が影響を与えているのでしょうか。加齢とともに側頭葉にある作動記憶が衰えていきます。飲酒の影響も少なくないようです。(セミナー終了後に行われる交流会の飲酒量が減りそうな話しになってきました)

動脈硬化、肥満も脳の萎縮の原因のようですが体脂肪肥満型の女性には当てはまらないということです。私もあらためてメタボ気味のお腹周りが気になりだしました。

アルツハイマー型認知症患者は海馬が萎縮し脳の代謝が落ちてしまいます。その対策としていかに早く見つけるか、「超早期発見」が重要となります。また運動のほか、知的好奇心を持つこと、コミュニケーションなどが認知症予防になることが分かってきました。

blog150601dいかに認知症にならないようにするか、瀧教授は、兼務している東北メディカル・メガバンク機構が3万人の脳、MRI、生活習慣、遺伝子分析を統合した世界一の脳画像データベースを保有し今後の予防策を研究していることを紹介しました。

ここで質疑応答タイム。驚くほどたくさんの手が上がったことで参加者の興味が深く、多岐にわたっていることが分かってきます。参加者から寄せられた質問の一部をご紹介しましょう。

Q1.脳の萎縮とは脳細胞がなくなることなのか?
Q2.運動の頻度や強度は脳にどのような影響を与えるのか?
Q3.脳の委縮を抑制するコミュニケーションの手段としてSNSは有効か?
Q4.知的好奇心は持っているだけで良いのか?
Q5.睡眠の量と質はどう影響するのか?
Q6.ストレスと脳の萎縮とはどう関係するか?
Q7.食事や血中濃度と認知症に関する具体的なデータがあるのか?

blog150601b「認知症の超早期二次予防」の活用も含め、「認知症は予防できる可能性は見えてきている」と全ての質疑に明快に答えていく瀧教授ではありますが、一方でまだ解明されていないことの多い研究分野であることも分かってきました。

ゆえに講義の後半は「生涯健康脳推進センター」の設立「生涯健康脳サイクル」の確立の話となりました。自宅にて日常生活習慣の種々の情報を収集していく「センシング」と「介入」「診断」「研究」のサイクルです。

センシングは健康増進ビジネスの大きな発展につながる可能性があり、最新の脳研究と日常生活の融合による認知症予防と、全ての業種は生涯健康脳維持に繋がる、力強く言い切る瀧教授でした。

その後、2度目の質疑応答の時間にも参加者から活発に手が上がりました。
Q8.長期間にわたる予防は可能か?
Q9.生活スキルと脳の活動との関係はどうか?
Q10.超早期予防にかかるコストはいくらくらいか?
Q11.認知症予備軍を区分する方法はあるか?
Q12.認知症予防事業化の具体的な可能性は何か?

瀧教授の講義内容とSAC東京参加企業から出るたくさんの質疑を聞きながら、最も産学連携の必要性が高い分野がここにあると思った次第です。

blog150601eこの活発な質疑のやりとりを交流会に引き継ぎました。今回は参加企業と講師の「ミニセッション・タイム」を設けてみました。「我が社に期待されること」、「参加企業が連携する必要性」など、より具体的な情報交流と人の交流が生まれたように感じました。

意外と若い参加者が多く、「本当に認知症」のことや認知症の人のことが分かっているのだろうか」というご意見もありました。事務局としても知りたいところです。

SAC東京第1回月例会 事務局レポート

SAC東京第1回月例会 参加者の声

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