SAC東京6期コースⅠ第3回月例会 事務局レポート
シニア市場とスマート・エイジング・ビジネス①
~いかにしてビジネスチャンスを見つけるか
コースⅠ第3回月例会はスマート・エイジング学際重点研究センター 企画開発部門長、東北大学ナレッジキャスト株式会社 常務取締役の村田裕之特任教授による「シニア市場とスマート・エイジング・ビジネス①~いかにしてビジネスチャンスを見つけるか~」が講義テーマです。
村田先生の専門は、シニアビジネス、高齢社会国際比較論です。一言でいえばわが国のシニアビジネス分野のパイオニアであり、高齢社会研究の第一人者です。
本日の講義は以下の5つの項目となっています。
-
- シニア市場の特徴とは?
- シニアの消費行動はいかにして起きるか?
- いかにしてビジネスチャンスを見つけるか?
- スマート・エイジング・ビジネスとは?
- With&Postコロナ時代のシニアビジネスとは?
1.シニア市場の特徴とは?
高齢者とシニアの定義
現在の高齢者の定義は「65歳以上の人」ですが、シニアには本来年齢の定義は無く、村田先生のシニアの定義は「60歳以上の人」です。
シニアビジネスの定義
-
- シニアが商品・サービスの使い手になるビジネス
- シニアが商品・サービスの担い手になるビジネス
公的介護保険とビジネスモデル
-
- 介護保険報酬に依存するシニアビジネス
- 介護保険報酬に依存しないシニアビジネス
シニアが商品・サービスの使い手となり、介護保険報酬に依存しないシニアビジネスを推奨する様々なデータや俗説と正しい見方が示されました。
シニア市場の俗説と正しい見方
俗説1「シニア層は、他の年齢層よりお金持ちである」
正しい見方:シニア層は、他の年齢層より資産は多いが所得は少ない
俗説2「シニア層は、資産持ちなので日常消費も多い」
正しい見方:シニア層の日常消費は、資産ではなく所得にほぼ比例する
俗説3「シニア層の消費は、『年齢』で決まる」
正しい見方:シニア層の消費は、シニア層特有の「変化」で決まる
2.シニアの消費行動はいかにして起きるか?
シニアの消費行動に影響を及ぼす「5つの変化」による事例を見ていきました。シニアの消費行動は他の年齢層に比べて変化の要因が多く、マーケットが均質になりにくいことが特徴です。
5つの変化
-
- 加齢による身体の変化
- 本人のライフステージの変化
- 家族のライフステージの変化
- 世代特有の嗜好性とその変化
- 時代性の変化(流行・生活環境)
3.いかにしてビジネスチャンスを見つけるか?
シニアビジネスの基本は不安、不満、不便、不具合といった「不」の解消です。また、売れなかった商品にこそ、次の事業機会が隠れているということです。ビジネスのポイントは以下の通りです。
シニアビジネスのポイント
-
- 飽和市場と言われている市場の周辺を見直す
- 毎日行く所がない「不便」を解消する
- 昔から存在するが、旧態依然としていて利用者の「不」が多い市場を狙う
4.スマート・エイジング・ビジネスとは?
スマート・エイジングの四条件
-
- 身体を動かす習慣
- 脳を使う習慣
- バランスの取れた栄養習慣
- 人と積極的に関わる習慣
スマート・エイジング・ビジネスとは以下の通りです。
-
- 「スマート・エイジングの四条件」の一つ以上を“意図的に”商品・サービスに組み込み
- その商品・サービスによって、顧客が「健康で前向きな気持ちでいられる」「いくつになっても成長できる」と実感し
- 顧客から対価を得るビジネス
5.With&Postコロナ時代のシニアビジネスとは?
コロナ禍でのシニアの消費形態として、以下のような変化が説明されました。
-
- 「非接触で価値を提供する」経済活動の拡大
- 「巣ごもり消費」と「安・近・短消費」が並存
- 倹約と出費を区分する「メリハリ消費」
- コロナ禍でスマート・エイジング志向が強まる
無用な外出を控える一方、ミニ旅行(マイクロツーリズム)の活用や運動不足解消のためにウォーキングを始める人が増加傾向です。自粛疲れ・倹約疲れの解消のために、やりたいこと、欲しいものへはそれなりの出費が見られます。精神的なストレスを貯めないことや健康志向が一段と強まったことにより、スマート・エイジング志向がより強まりました。
Postコロナ時代のシニアビジネスとは?
-
- 「新しい生活様式」の「不」を解消する
- 脳科学で不眠・うつなど「不」を解消する
- 地域の強みをネット通販で健康志向シニアに売る
これらを踏まえた商品・サービスの事例がたくさん紹介されました。
(以上で講義終了)
グループトークによる質疑(質疑のみ記載)
Q1.男性を対象としたカーブスの発想はあったのか?
Q2.シニアがよりデジタルを利用する為にどのような整備が必要であると考えるか?
Q3.シニア向けの販売は、売り切りとのサブスクリプションのどちらが有用か?
Q4.スマートフォンを使うシニアの特徴や活用方法は何か?
Q5.低価格設定のカーブスだが、高価格設定のサービス需要もあるのではないか?
Q6.介護保険を使っている事業者の中で介護保険の利用割合はどれくらいか?
Q7.シニア層に対するマーケティング手法として、口コミ以外で有効なものはあるか?
Q8.高齢者の資産と支出の相関関係はあるか?
Q9.カーブスを売り込んだ際、対象者やチャネルの工夫はあったのか?
Q10. アメリカで流行っているもので、今後日本で流行りそうな事業は何か?
Q11. シニア層のネットショッピングの利用率にどのような変化がみられるか?
Q12. 飽和市場の「不」の解消によるチャンスは、シニアビジネスに限った傾向か?
Q13. カーブスを日本に持ち込もうとしたきっかけはなにか?
総括
荒井事務局長よりポイント3点が示されました。
- シニア層の消費行動は既に国内消費の45%を占め、100兆円強市場という大きなマーケットとなっています。シニア層特有のマーケットは均質ではない為、どこの層をターゲットにするかが重要です。
- シニアビジネスの基本は、「不」の解消で、ここに大きなビジネスチャンスがあります。
- スマート・エイジング・ビジネスの需要の背景には「前向きに生きたい」という中高年の欲求が根底としてあるため、個人のスマート・エイジングを支援することがビジネスチャンスになります。
以上
(文責:SAC東京事務局)
タグ:シニア市場, スマート・エイジング, ポストコロナ, 村田裕之, 消費行動
あわせて読みたい関連記事
- SAC東京4期 コースⅠ第2回月例会 事務局レポート
- コロナ禍で「退職者の第三の場所」がなくなっている
- 東北大学スマート・エイジング・カレッジ東京を設立
- 「シニアビジネスマーケット」にSAC東京関連記事が掲載
- 人生100年時代の社会課題解決を「産・学・民」で共創