SAC東京6期コースⅠ第2回月例会 事務局レポート

人口高齢化の社会・経済に及ぼす影響

コースⅠ第2回月例会は経済学研究科、加齢経済学・高齢経済社会研究センター、スマート・エイジング学際重点研究センター 加齢経済学社会研究部門長の吉田浩教授による「人口高齢化の社会・経済に及ぼす影響」が講義テーマです。

少子・高齢化はなぜ起こり何が問題で何を解決すべきなのか、そのとき市場はどう変化するのか、超高齢社会におけるAIの活用法とは何かを理解することを趣旨とし、社会科学と市場経済学の視点で高齢化社会の問題を考えるという説明がありました。

本講義は以下の5つの項目となっています。

  1. 高齢化とは何か(人口学的内容)
  2. 高齢化とは何か(経済・社会的内容)、社会的側面(労働力・企業)
  3. ICT、AIの進展とその影響
  4. 高齢化とマーケット
  5. (臨)新型コロナウイルスへの対応

高齢化とは何か(人口学的内容)

高齢化とは人口に占める高齢者の比率が高くなることであり、高齢化率=高齢者人口÷全人口=高齢者人口÷(若年者+高齢者)の数式で表されます。

国際的分類において高齢化は3段階に分けられ、全人口に占める65歳以上の割合が7%以上の場合「高齢化社会」、14%以上の場合「高齢社会」、21%以上の場合「超高齢社会」と言いますが、日本は既に28%以上を占め次のステージに達しています。また、2016年の合計特殊出生率をみると他の先進国が約2.0%のなか日本は1.44%と非常に低い数値となっています。つまり、日本の高齢化が進む原因は長寿化と少子化が同時に起きているからです。

吉田教授は高齢化対策でビジネスを考える場合、増加する高齢者向けにどういう商品を売るか、減少する若年者でも高い生産性が維持できる商品は何かを考えるところにビジネスチャンスがあると多くのデータを基に説明されました。

高齢化とは何か(経済・社会学的内容)、社会的側面(労働力・企業)

高齢化を経済社会の視点から見ると、1965年高度経済成長期の国の医療費負担は65歳以上1人に対して20~64歳の約9.1人で支えていました。しかし、2050年は約1.2人で支えなくてはならず医療費負担は今より約1.4倍増加すると予想されます。

ここで、熊本県のある町では健康診断受診者の年間医療費が、健康診断未受診者の年間医療費の半額で推移している実態を例に挙げ、30年後も今と同水準の医療費負担に抑える一つの方法として、国民が病気にならないよう健康診断を行う重要性を説明されました。

これを企業側から見た場合、吉田教授は2つのポイントを挙げました。ひとつは若年者1人で2~3人分のモノが作れる仕組み作りと高齢者でも働けるような商品を開発することです。もう1つは健康診断未受診の3割の国民に対し簡易的、もしくは在宅で診断が可能な仕組みを作ることにより、年間10兆円の医療費節約となるビジネスチャンスがあるということです。

ICT、AIの進展とその影響

オックスフォード大学でAIの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授が2013年に執筆した「雇用の未来」の紹介がありました。702の職種が10年後にAIに代わられる確率を示したものです。テレマーケターや税理士はAIの代用が効くと考えられる半面、医療関係やセラピストのような相手によって対応が異なる場合は代用が困難です。このことからAIを活用した仕事と作業の分離による必要性が紹介されました。

高齢化とマーケット

ここでは国の「家計調査」や山口県の「調査事業報告書」をもとに、独居高齢者の購入頻度が高い項目の説明がありました。介護支援サービスはさることながら、続いて家屋設備関連とつながりサービスの需要が高く、新たに期待できるマーケットとして紹介されました。

(臨)新型コロナウイルスへの対応

新型コロナウイルスを例に挙げ、街並みや施設等の破壊が無く人間に対してだけの被害から「ヒト」に対する視点が重要であることを強調され、人と人が接触しなくても経済活動を維持させるための新たな課金システムの研究が必要であると説かれました。ICTやAIを活用した少ない人材で多くの成果が得られるビジネス、高齢者の労働参加を促進するビジネス、社会的意思決定を変えるような製品などたくさんの構想が紹介されました。

(以上で講義終了)

グループトークによる質疑(質疑のみ記載)

Q1.独居高齢者に対するつながりサービスの具体例や成功事例はあるか?
Q2.シニアに対しオンラインでリアルな価値提供は可能であるか?
Q3.健康診断を簡易的に受けさせるビジネスの展開例はあるか?
Q4.男女平等の働き方以外に出生率が上がる要因はあるか?
Q5.健康診断を行うことで広義の意味での医療費削減につながるか?
Q6.より具体的なスマーエイジングハウスのサービスはあるか?
Q7.AIやICTを活用して心身の低下を防ぐことは可能か?
Q8.諸外国の健康診断受診率は日本と比べて高いのか?
Q9.社会的意思決定を変える具体的な製品は何か?
Q10.オンラインで行われる新しい課金システムとは何か?
Q11.コロナによる在宅環境は少子高齢化にどう影響すると考えるか?
Q12.少子高齢化による質の不足とはどういう意味か?
Q13.医療機関と同等の健診内容を自宅で行う為に必要なものは何か?
Q14.BtoBの製造業のサービス化を具体的に教えてもらえないか?
Q15.東北地方で高齢化が進んでいる理由は何か?
Q16.出生率対策のために日本は30年前に何をしなければいけなかったか?

総括

村田特任教授よりポイント4点が示されました。

  1. 社会の高齢化が進むと労働人口が減り少人数で生産性をあげなくてはいけません。どう具体化するかが我々の課題でありビジネスチャンスでもあり、なかでもAIの活用は有力なツールの一つとなります。
  2. 家計調査から高齢単身世帯のニーズとして、介護以外に家屋の整備とつながりサービスの需要が高いこともわかり商品化の可能性があります。
  3. 社会の高齢化が進むと医療・介護費は増大しますが、健診率を上げることで医療費は減り認知症を含め介護予防にもつながります。
  4. コロナの影響によりオンライン化できることは益々オンラインで普及します。その時に重要なことは何の価値に目をつけるかと、在宅で実現できることは伴奏人役も含めてビジネスチャンスがあるということです。

以上

 

 

 

(文責:SAC東京事務局)

 

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