SAC東京6期コースⅠ第1回月例会 事務局レポート

脳科学を応用して新産業を創生する①

「脳科学を応用して新産業を創生する①」をテーマとした加齢医学研究所所長、スマート・エイジング学際重点研究センター長である川島隆太教授のオンライン講義で第6期がスタートしました。

超高齢社会に向けて「認知症ゼロ社会実現のために」をテーマに認知症予防のための研究へ取り組む加齢医学研究所と、総合大学の強みを生かした様々な学科の戦略紹介から入りました。出生率減少と高齢者の増加は既存のビジネスモデルでは太刀打ちできません。アフターコロナにおいてもその状況は変わらないため、講義を通じてビジネスチャンスを掴んで欲しいと開講の目的を伝えた川島教授でした。

スマート・エイジングとは?

加齢現象は何かを失い退化するといった後ろ向きの考えではなく、人間の成長現象かつ、より賢くなることでありこれがスマート・エイジングの概念であると説明されました。更に健やかで穏やかな生活を送るためには、認知刺激・運動・栄養・社会性の四大要素に加え今後は睡眠も重要な要素になるようです。

脳の機能と加齢現象

脳の背外側前頭前野の機能は加齢と共に低下します。川島教授は前頭前野の機能パソコンの計算速度の速さ(CPU)と、それを処理する容量(メモリー)に例えて説明されました。CPUとメモリーは脳トレによる単純計算や音読による脳トレの直接的な学習効果に加えて、間接的な転移効果が得られる驚きの事実を紹介されました。

脳トレ研究の歴史

川島教授の脳トレが世に出た後、海外からその効果を否定する論文が出されました。最終的に効果肯定論文に転じましたが、そこには脳トレの効果を証明したランダム化比較試験(RCT)がエビデンスの中でも上位に位置しており、効果的にも科学的に裏打ちされていたからです。

脳のスマート・エイジング・記憶の量のトレーニング

脳トレを認知症患者さん向けの学習療法に応用した実例が、映像で説明されました。学習を続けた患者さんは前頭前野の活動が活発化しただけでなく、その表情に明るい変化がみられました。

脳トレ効果をさらに促進させる方法は?

自分の脳活動を可視化することによって脳活動がコントロール可能となるニューロ・フィードバックを取り入れると、認知機能向上やアート・創造性向上の転移効果が応用可能であることが論文で証明されています。また、コロナ情勢下の閉鎖的な環境において、自分の脳活動をコントロールするマインドフルネス効果によってストレス軽減が可能となることもわかり始めているとの説明がありました。

グループトークによる質疑(質疑のみ記載)

Q1.脳トレはなぜ楽しいと効果が出ないのか?
Q2.NeUの販売力と反響はどのくらいなのか?
Q3.健康な人が脳トレを始める、または継続するための秘訣は?
Q4.脳活動の可視化はマーケティングにどのくらい応用されているか?
Q5.脳の炎症を回復させる上でどのような睡眠が効果的か?
Q6.脳活動の可視化によるストレスコーピング例を教えてもらえないか?
Q7.川島教授が考えるシニア向けの脳トレは何か?
Q8.脳トレの結果から認知症の兆しがわかるのか?
Q9.12人中3人の脳トレ効果が無かった被験者の共通点はなにか?
Q10. NeUのExBrainがデバイスレスで開発される予定はあるか?
Q11.認知症やアルツハイマーの患者に共通する性格はあるか?
Q12.睡眠以外でアミロイドβやタウ蛋白を抑制や除去できる方法はあるか?
Q13.脳トレでより効果が高くなる時間帯やヒントはあるか?

総括

村田特任教授よりポイント4点が示されました。

  1. 脳トレには情報の「処理速度」向上「処理容量」拡大の2種類の訓練があり、どちらの訓練にも転移効果と呼ばれる間接的な訓練効果が起こります。
  2. 脳トレには重度の認知症の人に対しても認知機能を回復する力があります。
  3. 効果のある脳トレを開発するにはエビデンスレベルの高い検証と、脳の前頭前野が活性化しているエビデンスが重要です。
  4. 脳トレ効果を促進する方法の一つとして、ニューロ・フィードバックという手法があります。

以上

 

 

 

(文責:SAC東京事務局)

 

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