SAC東京5期コースⅡ第10回月例会 事務局レポート

東北メディカル・メガバンク計画とゲノム医療

東北メディカル・メガバンク計画とゲノム医療をテーマに東北大学メディカル・メガバンク機構長 山本雅之教授のご登壇です。

「未来型医療の代表例は個別化予防と個別化医療である」ということを、被災地でやろうと決心したのです。と、東日本大震災の話から講義が始まりました。

大きなダメージを受けた東北地方の創造的復興の実現に向けて東北メディカル・メガバンク機構を設立しました。被災した方々に最先端の未来型医療を届けたいという願いは、より健康で豊かな生活を実現し「健康長寿の国」を作る活動につながっています。

個別化ヘルスケア(個別化医療と個別化予防)

ゲノムコホート調査は個人に合わせた予防医療確立の鍵です。世界的にも大規模家系情報付コホート・バンクに期待が集まっていますが、出生三世代コホートは難しく、米国や英国でも途中で取り止めとなりました。そんな中、東北メディカル・メガバンクは2013〜2017年でリクルートを完了させました。

コホートリクルートの様子

地域住民コホートと三世代コホートの2種類のコホートを活用することにより大きな成果を目指してきました。総計15万人以上のリクルート達成には震災復興への住民の想いが大きかったことを感じます。

そこには、東北大学への信頼だけでなく、リサーチコーディネーターの活躍が大きかったと評価する教授です。待つのではなく、出かけて行って情報を得る努力をしたそうです。この取り組み姿勢が現代の日本に必要なことだと感じたのは私だけではなかったでしょう。

調査項目は一般の人間ドックよりはるかに充実した検査項目です。これが無料で、長期追跡付きです。もちろん、検査結果は個人の健康管理に役立てます。対象疾患以外の病気の早期発見は結果を市町村に伝達することで必要な対策につなげています。

ライフコーディネータの情報収集

ライフコースデータのリンケージにより詳細な縦断的解析が可能な社会にすることを「先進国にふさわしい健康情報があるべき」と言う山本教授に大賛成です。情報の管理ができない方の入院時などをはじめ、情報不足に混乱している現場は少なくありません。

バイオバンク構築

東北メディカル・メガバンクは国際的にも超一流の複合バイオバンクであり、その試料・情報分譲を実施しています。産業界が利用しやすい知的財産の制度設計も必要です。

遠隔セキュリティエリアの全国展開によるデータビジテイングの実現で、日本全国に情報を提供できるようになりました。「使ってくださいね」と参加者たちに微笑む教授です。

未来型医療実現への貢献

がんや診断がつかなかった病気の治療にゲノム情報が大きく貢献しています。日本人は集団内での遺伝的同質性が高いので宮城・岩手中心の情報でも有用性があります。治験などもゲノム・オミックス情報を活用した層別化創薬が良いことが分かります。

ゲノム情報を活用した日本の未来型健診モデルとして、3〜5年でジャポニカアレイを日本の医療に持ち込む構想を話してくれました。「未来」はすぐそこまで来ています。

パーソナル・ヘルスマネジメント(PHM)社会

「一人一人の個性に目を向け、体質(遺伝子)や環境・生活習慣などの違いに対応した個別化ヘルスケアが実現する社会を作りたいです。少子高齢社会をチャンスとして、世界の先端をいきましょう」と、60分の講義が終わりました。

グループトーク・講師への質問(一部を抜粋)

Q1.メガバンク情報をどこまで教えるの?
Q2.バイオバンク利用案内、サービス関連での事例を教えて
Q3.子ども世代の追跡方法は?
Q4.国の支援や動きは?
Q5.宮城・岩手の住民以外が参加することはできるの?
Q6.10年後を予測して、認知症がどのくらい分かるようになりそうですか?

質問に丁寧にコメントする山本教授は、参加企業の情報を驚くほど把握していました。一人一人に向き合うことを大切にする姿勢が至るところに現れていることを多くの参加者が感じたようです。

以上

(文責:SAC東京事務局)

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