SAC東京5期コースⅡ第1回月例会 事務局レポート

脳科学を応用して新産業を創成する

pfofKawashima

「脳科学を応用して新産業を創成する」をテーマとした加齢医学研究所長、スマート・エイジング学際重点研究センター長である川島隆太教授の講義で第5期がスタートしました。

「脳トレのエッセンスが何であるかが分かる1時間にしましょう」という川島教授の提案に、参加者は目を輝かせました。

脳の機能

脳の働きや機能を知るためには大脳の理解が必要です。解剖図で示しながら情報の経路、場所毎の役割の違いなどを丁寧に説明する川島教授です。

領域毎に支配する動脈が異なり、血管が詰まるとどうなるのかを病態として理解していきました。自分の脳をイメージしながら講義を聴く参加者たちは、ドンドン脳に興味が湧いてきたようです。

加齢現象

20歳を過ぎると低下していく脳の機能です。思考や記憶などを司る前頭前野の機能が失われやすいこともよく知られています。この機能低下を緩やかに、横ばいに、可能であれば持ち上げるようにすることができないかを探求していきます。

頭の回転速度のトレーニング

脳をコンピューターに例えて考えます。回転速度が落ちるのはCPUが劣化した状況と同じであり、情報処理速度の訓練に効果が期待できます。人類は記号を扱うと脳が発達することがわかっています。記号処理が脳の刺激になるのです。計算が良いのではなく、速くやることがトレーニングになることがわかりました。

回転速度トレーニングの効果

回転速度がアップして素早く処理する力が向上しました。それとともに、様々な認知力がアップしていることもわかりました。トレーニングによって大脳皮質の体積が増加したのです。

記憶の量のトレーニング

新しいことの学習が難しくなるのは、情報処理が速くできなくなることであり、パソコンでいうとRAMが劣化した状態です。参加者の情報処理の力を簡単な実験で確認しながら講義は楽しく進みます。しかし、大学生が簡単にできるNバック課題ができなくなっている参加者たちは、自分の脳の衰えに苦笑いでした。

記憶の量のトレーニング効果

学習効果として記憶の容量がアップします。そして、転移効果としても様々な認知力がアップしたのです。前頭前野における神経線維の体積が増加したこともわかりました。これが認知機能が向上しているエビデンスです。

認知症ケアへの応用

認知介入課題ではこの3点を満足する必要があります

  1. 頭の回転速度と記憶力を使うこと
  2. 単純かつ容易であること
  3. 充分に脳に負担がかかること

学習療法

動画での事例がたくさん紹介されました。医療では治療効果が求められない方が、一年後には別人のように感情表現ができるようになり、コミュニケーションが取れるようになりました。これらの事例は奇跡と言われますが、脳を支え、蘇らせた実例なのです。

重度のアルツハイマー型認知症の方の事例は、川島教授でさえ効果は期待できないと思っていたそうです。ケアスタッフの希望で続けた学習療法の効果で、車イスに座って家に帰ることができたそうです。介護の現場ではこんなステキなことがたくさん起きているのです。

脳トレ効果をさらに促進させる方法

現状の問題点を理解しながら未来に向けて考えていきました。統計的に有意な効果であっても、全ての人に有効というわけではありません。また、トレーニング中の背外側前頭前野の活動量と相関することは証明できましたが、全員のMRI評価は困難です。

東北大学と日立ハイテクノロジーズによる脳科学カンパニー

(株)NeUにおける技術革新が紹介されました。日常生活空間で脳活動を可視化できる時代です。その日の体調に合わせ、前頭前野を活性化して脳トレ効果が期待できる脳トレアプリを選択することができるのです。認知機能を鍛える“新”脳トレで自らの脳のトレーニングを考える参加者たちでした。

アイスブレイク

村田特任教授が講義の要点や用語の整理を行いグループトークへつなぎました。

グループトーク

グループ毎に「これを聞きたい」と講師への質問を集約します。異業種の視点に刺激され、学びが深まる時間です。

【グループ質疑】

グループからの質問が川島教授からたくさんの情報を引き出しました。(質問のみ記載)

Q1.脳科学と心理学の違いは?
Q2.視聴覚障害のある方への脳トレは?
Q3.脳トレは被験者のやる気によって変わるのか?
Q4.瞑想アプリ開発での脳の影響を教えて
Q5.ニューロフィードバックの具体的な場面での効果的な方法は?
Q6.認知トレーニングと他のトレーニングを加える効果は?
Q7.英語は5歳までに教えた方が良いのか?
Q8.学習療法サポーターの検証はあるの?
Q9.「XB-01」はもっと小さくなるのか?
Q10.「XB-01」の今後の展開は?
Q11.認知機能ピークは延長できるか?
Q12.計測に関して脳波は有効か?
Q13.CMで医師がお勧めですと言ったらエキスパートオピニオンか?
Q14.脳トレ効果のアウトカムはMMSEが良いのか?
Q15.脳活動計測で人間の感情は計測できるのか?
Q16.子供たちの脳トレ介入効果は?
Q17.NIRSは運動中でも測定できるか?
Q18.表の見方をもう一度教えて
Q19.学習療法はこれから広がるのか?
Q20.ニューロフィードバックは自閉症などの神経障害に効果はあるか?

総括

1回目だけでも考えることはたくさんありましたね、と参加者を労いながらまとめを担った村田特任教授でした。大学だけではできないことを企業が連携することで継続できる脳トレができたように、ビジネスチャンスのヒントがたくさんあるSAC東京です。
講義の理解が深まり、ビジネスの視点で考えることとして好評なまとめの時間でした。

以上

 

(文責:SAC東京事務局)

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