SAC東京4期コースⅠ第9回月例会 事務局レポート

健康は計れるか?

コースⅠ第9回月例会は医工学研究科副研究科長の永富良一教授による講義テーマ「健康は計れるか?」の講義です。

健康とは?

ジョギングの提唱者ジム・フィックス(Jim Fixx) は51歳で心筋梗塞によって亡くなりました。葉巻の愛煙家であった元英国首相のウィンストン・チャーチル(Sir Winston Churchill)は90歳まで生きました。
永富教授は「どちらが健康か?」と参加者へ問いかけました。
「健康とは?」教授も答えを探し続けています。

国連が定める定義はあります。単に病気がない、障がいがないということではありません。「健康」を損なわないように、「病気」にならないように「健康を測る」ことが永富教授の研究テーマです。

2008年以前は早期発見、早期治療、それ以降は危険因子特定検診、生活習慣の改善のためとなっています。

病気と未病

「未病」は重要な概念ですがメカニズムが分かっていません。永富教授の研究はメカニズムの解明ではなく「病気と未病」のコンセプトづくりです。

さらに「肥満症、高血圧、糖尿病は病気か?」と永富教授は問いかけました。厚労省では病気扱いです。しかしこれらは診断された時には機能障害、自覚症状はありません。しかし、いずれも心血管疾患の危険因子です。

危険因子とは?

疾患等の発症確率に関する因子はバイオマーカーと生活習慣です。性別も危険因子の一つです。例えば男性は遺伝子多型によって心筋梗塞になりやすい。これらの危険因子は疫学研究に基づくエビデンスベーストメディシン(EBM)によって解明されてきました。

疫学とは?

「人集団で証拠を出す学問」が疫学研究であり、分子生物学や生理学と比較して人に対する証拠能力が高いのが特長です。

危険因子の考え方

10万人に1人、この確率は個人には大したことではありませんが、行政にとっては大きな問題となります。
ここで様々な疫学研究の事例が示され講義が進んでいきました。例えば歯磨きを1日に3回以上する人はメタボリックシンドロームの危険因子は低いという結果が出ました。しかし、その理由は分かっていません。歯磨き後はダラダラ食いがなくなるのではないか、というのが教授の推測です。

ウェアラブルデバイスで健康を計れるか?

装着型生体情報センサーは以下の区分があります。

一次情報・・・加速度、電位、圧力、外部信号からの変位、化学変化など
二次情報・・・歩数、心電図、血圧、位置、血糖など
三次情報・・・活動量病態(心筋虚血、高血圧、糖尿病など)、疾病リスク

誰が使うのか、何を測るのか、どこで使うのか、いつ使うのか、どうやって使うのか、何のために使うのか、いわゆる5W1Hの整理が必要となります。

未病研究は発展途上段階であり、長時間・長期間追跡調査ができると予測できる可能性が高くなります。
しかし、これは研究者ニーズです。一般人には健康は空気のごとし、病気にならないと困らない、このギャップを解決することも課題となっています。

日常生活人間ドック構想

未病は多くの生活習慣の改善で解決することが期待されています。普段の生活の中から、様々な病気などの「源」を感知して未病発見を目指す東北大学の構想があります。シナリオ実現に向けた研究開発によって現在の「健康を守る仕組み」から「近未来型の健康を守る仕組み」づくりを目指しています。

永富教授が問う「健康を計れるか?」の答えは「Yes とNO」でした。ポイントは変化する健康ニーズに応えることです。
永富教授は自ら提唱する健康の定義を示して講義は終了しました。

健康とは?

(1)やりたいことがある
(2)やろうとする意欲がある
(3)やるための体力がある

【グループ質疑】

各グループから出た質疑は以下の通り(質疑のみ記載)

Q1.EBMの研究結果、成果などの情報を公に知らしめる方法は?
Q2.単独企業で調査を行う場合3,000のNが難しい、N数が少ない場合の手段
Q3.心筋梗塞、国別、食事ビッグデータの実用化の事例は?
Q4.病気のメカニズム、疫学研究で実証された事例は?
Q5.バイオマーカー、人の生活行動、家庭内の観察行動として奥様の観察を研究してほしい。
Q6.健康の定義、社会的健康測定研究はあるか?
Q7.健康の定義、センシングなど個人の行動変容への応用はどうしたら良いのか?
Q8.三次情報におけるウエラブル情報活用の事例
Q9.健康に良いサプリ、消費者へのエビデンスの高低の考え方と見通しはどうか?
Q10.国別データにおける日本との比較データの違いは風土なのか食事が原因か、その違いは何か?アビコネクチンのデータな何で分かるか?
Q11.教育レベル 意識レベルの高い人ではない一般人の行動変容への研究しているところはどうか?
Q12.未病のための行動変容において芸能人を使っても健診率が上がらないが、有効なキャッチフレーズは?

総括

「健康とは何か?」
この定義もニーズも変化し続けています。疫学研究などから示される結果によってさらに健康の意識は変わっていきます。

人生100年時代における「やりたい」ことを実現するためには意欲や体力づくりが必要です。病気にならないことと合わせて、病気になっても健康で生き続ける。
そのために日常生活の中で「健康を測る」ことが必要です。
健康ニーズとコンセプトづくりからビジネスへの応用がますます期待される分野です。

以上

 

(文責:SAC東京事務局)

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