SAカレッジ22年度 コースⅡ第9回月例会は、江草 宏 教授です!
世界で初めて歯茎からiPS細胞を作製
SAカレッジ22年度 コースⅡ第9回月例会は、東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野 教授、歯学イノベーションリエゾンセンター長、先端再生医学研究センター長、東北大学病院 総括副病院長、江草 宏 教授「ips細胞を利用した骨再生材料の創生」です。
歯科治療の概念を大きく変えたインプラントの原理が発見されたのは二十世紀半ばのことです。以来、この治療が普遍的なものになるのに約50年もの年月を要しました。
日本発の科学技術である“iPS細胞”は、発見から約15年が経過しましたが、現在も国民の期待を集め、その医療への応用が推進されています。はたして、iPS細胞は、身近な医療技術となっていくのでしょうか?
江草先生は、iPS細胞から人工骨を作製し、これを基盤とした新たな骨再生医療の事業化に取り組んでいます。細胞を用いた医療技術を事業化する際にどんな課題に直面し、それをどのように解決していくのか、今日に至る長い研究開発の道のりとともに紹介していただきます。そして、大きな期待を集めている近未来の再生医療技術について、江草先生が構想する夢のあるビジョンと研究開発およびその事業化に関する最前線の情報をお伝えいただきます。
iPS細胞を用いた再生歯科医療技術の開発
歯科治療で切除された歯肉から作製したiPS細胞を用いて、顎の骨や歯の再生医療を目指した研究に取り組んでいます。グループリーダーの江草先生は、世界に先駆けて歯茎(歯肉)からiPS細胞を作製し、歯肉の細胞を用いるとiPS細胞の樹立が容易であることを示しました(Egusa et al. PLoS One 2010)。
また、歯肉の細胞はiPS細胞を維持するフィーダー細胞にも利用できることを明らかにし(Yu et al. J Dent Res 2016)、歯肉がiPS細胞の有望な細胞資源のひとつであることを示しています。
この成果に基づく特許は、米国バイオ企業との実施許諾契約に至っており、創薬研究や再生医療への展開が期待されています。また、マウスの歯肉から作製したiPS細胞から成熟した骨芽細胞に誘導する方法を確立し(Egusa et al. Stem Cells Dev 2014)、試験管内で三次元的な骨様組織を作製することに成功しています(Okawa et al. Stem Cells Int 2016)。
一方で、歯肉から作製したiPS細胞からは、複雑な皮膚器官系の再生も可能であったことから(Takagi et al. Science Advances 2016)、この細胞を用いた歯の再生も可能であると期待し研究を進めています。
(東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野HP 研究概要より抜粋)
異能β(総務省公認のへんなひと)に認定!
江草先生は2021年6月に異能βに認定されました。異能βとは、総務省で行われている異能vationプログラムにおいて選考・認定されます。
「異能vationプログラムの破壊的チャレンジにおいて卒業が認定されると、異能β(総務省公認のへんなひと)として認定され、異能マスターズに加入することが出来ます。又、異能vation ネットワークや協力協賛企業、スーパーバイザーによって構成されるマスターズパートナーによる推薦、承認によっても異能βに認定されることができます。異能マスターズは異能βの地球規模の活躍を支援する組織です。世界を変える可能性のある奇想天外な「Ambitious Technical Goal」へ挑戦を続ける世界最高に諦めの悪い挑戦者「異能β」を支援します。」(異能vationプログラムHPより抜粋)
iPS細胞の腫瘍化を回避した骨再生治療への挑戦
(イノベーションを生み出す開発者達のプロフィールページより)
「近年、動物愛護や長寿化を背景に、犬・猫などのペットや競走馬の骨折等に対する骨再生医療のニーズが広がっている。 自身はこれまでに、歯を失った後に痩せてしまった顎の骨を再生する新規治療技術の開発に取り組む過程で、iPS細胞から人工骨を作り出し、これを凍結乾燥することで骨補填材を得る技術を着想した。 当該製品は、従来の骨補填材にはない骨誘導性を示すだけでなく、iPS細胞を人工骨の産生ツールとして用いた後に死滅化するため、腫瘍化の懸念がなく、臨床応用が現実的であることが期待される。 本プロジェクトでは、当該製品をペットや馬の骨欠損治療に応用すべく、その骨誘導能を強化し、その効果を検証していく。」
科学者の世界リスト トップ2%にランクイン!
2022年10月にスタンフォード大学は、論文によって世界に影響を与えた科学者のランキングリストを公開。2021年の世界トップ2%の科学者に、江草先生は昨年に引き続き選出されました。このランキングは、文献データベース(Scopus)に基づいて作成され、10万人を超える世界中の科学者を対象にしています。各研究分野において、総被引用回数、h-index、単著論文数、個別引用論文数、共著調整指数、総被引用回数と個別引用論文数の比など、様々な複合指標を基にした多角的な解析からランキングが作成されています。
SAカレッジでの江草先生の講義に関する情報はこちら
SAカレッジに関する詳しい資料入手はこちら
SACプロジェクト共同研究等に関するお問い合わせはこちら
あわせて読みたい関連記事
- SAカレッジ22年度 コースⅡ 第9回月例会質疑セッション 参加者の声
- SAカレッジ21年度 コースⅡ第6回月例会 参加者の声
- SAC東京6期コースⅢ第7回月例会 事務局レポート
- SAC東京6期コースⅢ第7回月例会 参加者の声
- 歯科金属アレルギーにおけるアレルギー抗原の発現機構を解明