健常者のコレステロール制限は推奨されない
5月1日 日本動脈硬化学会
SAC東京の講師である佐藤靖史教授(東北大学加齢医学研究所)が理事長を務める日本動脈硬化学会は、米国心臓病関係の学会であるACC/AHAが2013年に発表した「心血管疾患リスク低減のための生活習慣マネジメントのガイドライン」、2015年の米国農務省USDAから一般国民向けに発表されたガイドライン作成委員会レポート、わが国の「2015年日本人の食事摂取基準」を受け、改めてコレステロール摂取に関わる見解を次の通り表明しました。
「健常者において食事中コレステロールの摂取量と血中コレステロール値の間の相関を示すエビデンスが十分ではないことから、コレステロール制限は推奨されない。ただし、このことが高LDLコレステロール血症患者にも当てはまる訳ではないことに注意する必要がある」
詳細は次の通りです。(日本動脈硬化学会のコレステロール摂取量に関する声明文より)
動脈硬化を防ぐには、包括的な生活習慣の改善を介した予防が大切
日本動脈硬化学会は、まず動脈硬化性疾患へのリスクを正確に評価し、それに沿ってリスクを減らすような生活習慣を改善する包括的管理が大切であることを動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012において提唱している。この考え方は、ACC/AHAガイドラインの脂質に関する生活習慣マネジメントと一致するところである。高値となった血中LDLコレステロールを減らすためには、生活習慣、運動、食事など包括的に修正することが大切であり、コレステロール摂取のみを制限しても改善はほとんど期待できない。
脂質を減らすだけでなく、包括的な食事内容の改善を試みること、例として食物繊維を多く含む大豆製品、海藻、野菜類を増やすことが大切である。事実、これらは血中コレステロール値を下げることが明らかにされている。
大切なポイントは、肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、高トリグリセライド(中性脂肪)血症の方は、摂取エネルギー(カロリー)を制限する必要があるが、高LDLコレステロール血症の方は、より飽和脂肪酸やコレステロールの摂取量に注意する必要があるということである。動脈硬化を防ぐには、高LDLコレステロール血症だけでなく、血圧や血糖値のコントロール、禁煙や運動など包括的な生活習慣の改善を介した予防が大切である。
佐藤靖史教授は「高LDLコレステロール血症の患者の場合、食事からのコレステロール摂取量に注意する必要があるが、それだけで血中LDLコレステロールを低下させることは困難。血中LDLコレステロールを低下させるためには、コレステロールの摂取を制限するとともに、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を制限し、食物繊維を増やすなど食事全体のバランスを整えることが大切」と述べている。
なお、佐藤教授は、7月23日開催の第4回月例会で講師を務めます。
日本動脈硬化学会
コレステロール摂取量に関する声明
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