SAC東京5期コースⅠ第11回月例会 事務局レポート

健康によい、悪いとは?— 何を持って“エビデンス”とするか —

コースⅠ第11回月例会は、健康によい、悪いとは?— 何を持って“エビデンス”とするか — 」をテーマに大学院医工学研究科永富良一教授が「われわれは人間が運動を通じて より健康的に暮らせるようになることを目指して 幅広い領域の知識や技術を駆使した研究活動をおこなっています」というメッセージと共に登壇しました。

 

健康をはかる

何のために?を考えます。「病気」にならないように「予防」することがクローズアップされますが、「健康」を損なわないことがメインとなります。健康診断を例に健康評価の概念が変わってきたことを理解しました。

メタボ健診で評価するメタボリックシンドロームは「病気」ではないことや、「予防医学」というコトバにおいて、予防するのは医学ではないことなどを整理していきました。あらためて考えることで納得する参加者たちです。

危険因子

疾患等の発症確率に関連する因子を考えます。定量化できるバイオマーカー(採血値、血圧、BMI、年齢等や遺伝子多型等)より、定量化できない生活習慣(喫煙、飲酒、身体活動・不活動、睡眠、食事等)の方が影響力は大きいことに気付きます。

Evidence based medicine (EBM)

科学は観察から始まり検証していきます。誰かの気付きからスタートして研究が進み、追跡してエビデンスとなっていきます。これを肺がんとタバコの関係で示しました。

コホート研究は「今」を調べるので証拠能力が高いのに対し、症例対象研究では「昔」のことを聞き出すため証拠能力が低くなることを知りました。エビデンスレベル(結果の信頼度レベル)が最も高いのはシステマティックレビュー×ランダム化比較試験だそうです。

高齢者基本健診(介護予防)

運動機能向上プログラム全国調査の結果、筋力マシーン使用に効果が認められました。本人の力だけでは効果が出にくい(追い込むことで効果が出る)ことが分かったのです。高齢者への生活介入が必要というエビデンスになることがわかります。

講義開始時に「エビデンスの理解を事例で紹介します」と説明されたように“エビデンス”を感じ考える時間となりました。

5W1Hで考える

  • Who誰に使う(使いたい)か?- For whom 誰のために?
  • What 何を計る(計りたい)か?
  • Where どこで使う(使いたい)か?
  • When いつ使う(使いたい)か?
  • How どうやって使う(使いたい)か?
  • Why (What for) 何のために?

日常生活における食事・身体活動

運動・身体活動による疾患リスクの軽減、病気と未病、危険因子の考え方などが研究データで示されました。国際比較で心筋梗塞発症率が低い日本では、メタボリックシンドロームより日本らしい課題に尽力した方が良いという教授の意見に賛同する参加者も多かったようです。

疫学

細胞・動物を対象にした研究である分子生物学に比べ、集団を対象とした研究である疫学は誤差が大きく、研究結果の正確性は低いですが、人に対する証拠能力は高くなります。疫学が人集団で証拠を出す学問であることを感慨深く受け止めたのは、私だけではなかったと思います。

グループトーク・講師への質問(一部を抜粋)

Q1.ウェラブルデバイスで健康は測れるのか?
Q2.特定高齢者運動器機能向上プログラムオッズ比にばらつきが多い時の追加は?
Q3.メカニズムが分からなくても観察研究はできますか?
Q4.日本食の評価の中での地域差による影響は?
Q5.何を調べたら個人の未病が解るかの見通しは?
Q6.エビデンスレベルが悪い研究の場合、どうしたら良いですか?

質問することで講師からたくさんの情報を引き出す参加者たちです。実は、エビデンスが取られないまま市場に出ているモノがあることも私たちは知っています。市民のリテラシーが上がり、誤魔化せなくなってきていることも感じています。

「何をもってエビデンスとするか」と考えることは、健康にとどまらず、奥の深い課題であると感じた月例会でした。

以上

(文責:SAC東京事務局)

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