SAC東京5期コースⅠ第10回月例会 事務局レポート
酸化ストレス防御と健康
コースⅠ第10回月例会は、酸化ストレス防御と健康をテーマに加齢医学研究所 遺伝子発現制御分野 本橋ほづみ教授が登壇です。
野菜が体に良いことは昔から言われますが、特にアブラナ科の野菜・シソ科ハーブが酸化ストレス防御に有効なことが分かってきました。地球上の生物の進化と酸素の話から講義が始まりました。
酸素を利用すると効率的にエネルギーを取得できますが、好ましくない酸化反応も起こします。酸素があり過ぎてもいけないことは医療現場でも言われていますが、酸化ストレスは多くの病気の原因になっているのです。
環境応答
第1相反応:酸化・水酸化などによる基質の活性化
第2相反応:グルタチオン・グルクロン酸など親水性物質との抱合
第3相反応:薬剤トランスポーターにより細胞外への排出
生体は環境中の毒性を感知して遺伝子の発現を変化させることにより応答・適応しているのです。ベンツピレンの解毒の理論で酸化ストレスとNRF2を理解していきました。第2相反応が真の解毒反応を担い、NRF2が第2相酵素群を誘導することが分かったのです。
NRF2
NRF2は酸化ストレスから私たちを守るタンパク質であり、NRF2を活性化させると健康増進につながることが分かりました。創薬も進んでおり、NRF2活性化剤は糖尿病性腎症、多発性硬化症、脳梗塞・心筋梗塞後の組織の保護など多くの疾患への臨床応用が期待されています。
KEAP1のシステインに直接融合する物質
KEAP1は酸化ストレスなどに対するセンサー機能を持ち、ストレスを受けると不活性化してNRF2を安定化・誘導します。NRF2は転写因子であり、生体防御酵素群の発現を誘導制御します。
NRF2活性の制御をKEAP1のシステインに結合することで起きる脱抑制で学びました。このあたりになると、専門用語の連発に戸惑って首を傾ける参加者もいますが、ブロッコリースプラウトのスルフォラファンや、わさびのイソチオシアネートなどを食べることでNRF2が活性化されることは理解でき、大きく頷く参加者たちでした。
NRF2を活性化させると抗酸化作用に加え、抗炎症作用も得られ、寿命の延長・認知症予防にもつながると講義は進みます。アルツハイマー病モデルマウスでの研究データなどが示され、たくさんの成果に期待は膨らみました。
NRF2の活性化作用がある食品成分の効果
わさびスルフィニル(6MSITC)をマウスの水に投与し続けた実験でも効果が得られました。私たち人でいえば、毎日ブロッコリースプラウトを食べたことと同じです。
サプリも出てきているようですが、毎日の食事でKEAP1-NRF2系を活性化させて健康寿命を目指そう、というメッセージで講義は終わりました。
グループトーク・講師への質問(一部を抜粋)
Q1.スルフォラファン(ブロッコリースプラウト)に悪い効果はないのか?
Q2.NRF2が単独で存在しない理由は?
Q3.食習慣以外で同じ効果はないのか?
Q4.ブロッコリースプラウトの摂り方で効果が最大なのは?
Q5.KEAP1のシステインに直接融合する物質は他に何か?
Q6.酸化ストレスで最も影響が大きいのは?
心筋梗塞後の再還流時などの急性期には薬として投与することが良く、日常生活においては食事として摂取することが望ましいことなど、講師コメントで理解が深まります。
また、本わさびでないとNRF2を活性化させる成分(イソチオシアネート)は摂取できないことを知り「チューブわさびではダメか」と残念がる参加者たちでした。
多くの病気に影響を及ぼす酸化ストレスです。美味しく、飽きずに、毎日摂取できることを見つけ出すのは企業の役目だという意見が聞かれ、頼もしい月例会となりました。
以上
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(文責:SAC東京事務局)
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