SAC東京5期コースⅠ第2回月例会 事務局レポート

SAC東京5期コースⅠ第2回月例会 事務局レポート

スマート・エイジング研究の実際①〜認知機能を向上させる生活介入効果の個人差や最適な介入方法について

pfofnouchi

5月22日(水)開催のコースⅠ第2回月例会講義の事務局レポートです。
講師は加齢医学研究所認知健康科学研究分野、スマート・エイジング学際重点研究センター野内類准教授、講義テーマは「スマート・エイジング研究の実際①〜認知機能を向上させる生活介入効果の個人差や最適な介入方法について」です。

野内類准教授は認知健康科学が専門です。「私が作った言葉だから、聞いたことがないでしょう」と笑顔で講義をスタートさせていきました。

認知科学健康科学における健康

個人や社会に適応した柔軟で健やかで豊かな認知機能である状態をめざし、認知介入、運動介入、栄養介入の他に第4の健康の柱を作っていきたいと考え、生活介入を研究しています。
共通する方法は「RCT=Randomized Controlled Trial」であり介入における事前調査と事後調査です。

認知機能の生涯発達

認知機能とは情報を覚え、思い出したり、注目したり、判断したりする心の動きの総称です。例えば車の運転時、脳の実行機能が低いと運転技能は低くなりエラー数が増えてしまいます。また認知機能の低下によってエピソード記憶が低下し、生活の質が低下していきます。

簡単な生活介入プログラムの開発・実証

介入によるストレス軽減を考慮して開発された「学習療法」は、とても簡単な音読計算トレーニングですが、早くやることによって負荷が上がります。野内准教授が開発に関わった脳トレゲーム「大人のDSトレーニング」も同じ原理でとても有効であったことが評価され、脳トレゲームのブームの火付け役となりました。

運動介入による認知機能の向上

体重増加は脳に悪影響を与えます。運動による体重減少は脳に良く、特に有酸素運動トレーニングと筋力トレーニングを組み合わせたサーキット運動トレーニングによって記憶力が向上します。また、別の男性限定の研究例では、肥満は両側側頭葉内側や後頭葉、前頭葉の一部、小脳前葉を減少させることが分かりました。
内蔵脂肪型の肥満が脳に悪影響を与えますが、男女の違いがあります。

栄養介入(フラボノイド)による認知機能の向上

フラボノイドとは植物に含まれる色素、苦味、辛味成分でありポリフェノールの一つです。野内准教授はオレンジに含まれるヘスペリジンに注目しています。馴染みのある飲料で、心理的に嫌悪感が少なく、日常的に摂取可能なこと、サプリメントに代表されるタブレット型ではないため誤飲やのどに詰まらせるリスクが少ないこと、市販されている商品で、誰でも実施可能なことが今後のビジネス展開にも優位性が期待されています。
オレンジジュース1日500ml(200mgのヘスペリジンの摂取)で認知機能が向上します。

運転技能注意トレーニング

車の中で脳トレをやった研究によって、「自宅TVで実施する脳トレによる運転技能・認知機能向上」の脳トレゲームを開発しました。
6週間の介入によって運転技能の向上と認知機能(処理速度と抑制能力)が向上します。

生活介入の個人差と介入の最適化の方法

認知介入効果には以下の個人差があります。

  1. 年齢差:若い人の方が効果あり
  2. 遺伝子型
  3. 事前の認知機能
  4. 事前の気分とモチベーション
  5. 性格

加齢による認知介入の効果の低下は音読計算トレーニングが有効であり、後期高齢期に入る前に介入する予防的アプローチが重要です。

事前検査:性格を測る

効果が大きい人は神経症・誠実性=やり抜く能力がある人、継続的に頑張ることができる人です。事前に性格を把握することによって事前に作動記憶の向上、流動性知能の向上が予測できます。効果が出そうにない人には別な介入方法を提案することが必要になってきます。このような生活介入効果の個人差の解明によって生活介入費用対策効果を向上できる可能性があります。

個人に最も適した生活介入の提案

生活介入による認知機能・精神的健康のためのグローバル・アプローチは以下の通りです。

  1. 事前検査:生活習慣、性格、認知力
  2. 認知介入効果が高い人、運動介入効果が高い人の見極め
  3. 介入効果を促進する工夫(栄養介入など)

野内准教授が行う研究の最終ゴール

  1. 認知力を維持・向上させる最適な訓練を提供する積極的な個別・予防対策の展開
  2. 年齢を重ねても、元気に健康で暮らせる適応的な超高齢社会の実現

【グループ質疑】

グループからの質問が野内先生からたくさんの情報を引き出しました。(質問のみ記載)

Q1.介入者に日常生活指針として介入する必要は?
Q2.脳トレの効果が得やすいタイミングは? 子供の時から必要か?
Q3.肥満と認知症の関係について、肥満がなぜ悪いのか?
Q4.意欲が低い人は認知症になりやすいのか?飽きが出た場合はどうか?
Q5.運動介入の方が効果は出やすいというが、その程度、高齢者にはどう効果が出やすいのか?
Q6.サンプルサイズ、社会的貢献できる介入評価などはあるか?
Q7.オレンジジュース以外の類似製品の可能性は?500mlの飲料はとりにくい、オレンジそのものではどうか?
Q8.有酸素運動と筋力運動の組み合わせ理由は?
Q9.有酸素運動と筋力運動の組み合わせ理由は?
Q10.認知症予防とAI、ビッグデータとの活用の予定は?
Q11.認知介入と運動介入を同時にやることによって相乗効果があるか?
Q12.運動介入によるサーキットの有酸素運動は具体的にどういう運動なのか?その中で効果があったのは?個人で管理ができるものは何か?
Q13.作業トレーニングした際に他の脳ヘは効果があったか?

総括

全ての介入のアウトカムは認知機能の向上です。
RCTの方法が重要であり、比較的簡単に誰にでも取り組むことができます。
しかし環境要因など個人差があります。
ビジネスチャンスは生活介入の効果を訴えること、そのためにSAC東京で学ぶ 認知介入の理解と応用が重要となります。

以上

(文責:SAC東京事務局)

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