SAC東京5期コースⅡ第7回月例会 事務局レポート

消費者はどのようにしておいしさを感じているのか?

文学研究科心理学研究室坂井信之教授がご登壇です。テーマは、「消費者はどのようにしておいしさを感じているのか?」です。

臭いのトラブルや、匂いのビジネスがこの7〜8年で方向が変わったように、社会が大きく変わってきました。食べることは幸せの源であること。快適・幸せをいかに感じるのか?という投げ掛けで60分の講義が始まりました。

専門分野の紹介

・味覚と臭覚の仕組み
主に脳の機能を中心に
・おいしさ/香りの認知
学習・記憶から社会的文脈効果まで
・製品の使用感・選択
ボトムアップとトップダウン
ヒューリスティック判断
・応用心理学
運転行動から購買行動まで

深いなぁと感じながら、坂井先生の話に吸い込まれていく参加者たちです。

自己実現理論

アメリカの心理学者アブラハム・マズローが8、9段階まで文章にしたものを5段階の図に変換したものがマズローの欲求5段階説だそうです。欠乏欲求より上位の成長欲求を、自己実現欲求の上に知識・美への欲求を加えて説いていきました。消費者が求める幸せと提供側の求める幸せに違いことがあることも理解していきます。

さすが心理学の先生です。この理論の理解のために詳しく説明してくれました。

味覚の官能評価

たくさんのデータを使って感じ方を説明します。人工甘味料では、味の素を塩味に感じること、病院などの減塩食では温度を上げて、醤油を最後にたらすと塩味がアップすることまで知りました。うまみを活用し、香りやメリハリを付ける工夫で大きく変えなくても満足が得られようです。

5基本味

甘み、旨み、塩味、酸味、苦味の基本味は世界的に認められている項目です。最近の若い人は、好きなものは「あまい」/嫌いなものは「にがい」と表現するらしいのです。ビール好きの坂井先生も、苦い漢方薬はイヤですと笑いを誘います。苦い味が嫌いといえ、甘いビールを作れば良いわけではないことに納得する参加者たちでした。

「本当に消費者が求めていることにバイアスがかかっていませんか?」との問いかけにグサッときたのは私だけでは無かったでしょう。

味覚の存在意義

味覚受容体は舌のみではなく、胃・腸管にも存在し、インクレチン効果(インスリン分泌促進)が在宅でも進んでいます。甘みは胃の排出を促進し、苦味は胃の排出を抑制します。「味わい」だけでなく、嚥下・消化・吸収のためでもあるのです。そういえば、高齢者に処方される補助栄養剤はおおむね甘いです。

舌の上で感じる味の分布

味蕾のあるところなら、どこでも同じように味を感じることを閾値検査で証明しました。舌の先で甘み、舌の奥で苦味を感じるように思うのは、古い教育=知識でだまされた結果だったのです。「自分が専門家と思うとバイアスがかかりますよ」の言葉に戒められた気分でした。

ブランドとおいしさの関係、一目惚れの仕組み、フード・ノスタルジアなどを事例で紹介しながら講義は進みました。

「おいしい」とは?

・おいしいものは存在しない
人がおいしいと感じるものはある
・「脳がダマされた」結果としてのおいしさ
ヒューリスティック思考
・楽しく食べる=美味しく食べる
ポジティブが大切
・顔・目がポイント
視線で誘導できる

確かにそうだとうなずく参加者たちでした。

モノ中心→ヒト中心

・消費者が「おいしい」と思い、「手にとってくれる」商品とはどんなものか?
経験・信念に一致
・色のトレンドはどのようになっているのか?
複雑
・次の「食」はどこへ行くのか?
真理・文化・社会
と講義をまとめた坂井先生でした。

グループトーク・講師への質問

Q1.辛味の流行などで「5基本味」は増えるか?
Q2.味覚・嗅覚における脳への影響を教えて
Q3.薄味の不満は器で変わりますか?
Q4.そもそも舌の役割とは?
Q5.ノスタルジック体験、5感における優先順位は?
Q6.苦手な食品を嗅覚などの調整で提供できるか?
Q7.妊娠中の食品摂取のネガティヴな影響は?
Q8.人種によって影響があるか?
Q9.選択肢は5〜9がベストという意味は?
Q10.正常時と、ストレス時における味覚の感じ方は?
Q11.味覚の経験における好き嫌いで操作する学習事例はありますか?
Q12.食べ物の味の感じ方で身体状況が分かりますか?
Q13.スタバのオシャレ感は、高齢者にも適合するか?
Q14.おいしいとされるモノのトレンドは何によって変化してきたの?
Q15.嗅覚を錯覚させることによって体内吸収は変わるのか?
Q16.産学連携で希望することは?

参加者たちからの質問に丁寧に答えていく坂井先生です。その後の名刺交換でも深い話ができたと喜ぶ参加者たちでした。

以上

(文責:SAC東京事務局)

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