空間づくりに重要な“脳科学の知見”
空間づくりに重要な“脳科学の知見”に関する村田特任教授の記事が掲載されました。
高齢者住宅新聞記事より転載
2月7日 高齢者住宅新聞
04年に上梓した拙著「シニアビジネス 多様性市場で成功する10の鉄則」で「退職者のための第三の場所」の例として、シカゴにあるマザー・カフェ・プラスを取り上げました。
それ以降、多くの企業が、このマザー・カフェ・プラスを真似して「○○カフェ」や「××サロン」を立ち上げましたが、ことごとく苦戦しました。苦戦理由の1つは、シニア向けカフェを平場のラウンジにしてしまうことにあります。
平場のラウンジがダメなのは、広いスペースを使う割に、収益源が少ないからです。それ以上に重要な理由は、そもそも平場のラウンジには人が集いにくいからです。その本当の理由を脳科学の知見が教えてくれます。
例えば、動物のマウスをその大きさに比べてかなり大きく広い箱の中に入れた時にどのような挙動をするか観察すると、マウスは始終落ち着くことなく、大きな箱の周辺部のみをぐるぐると回り続けます。
実は、こうした広い空間の真ん中では、マウスに限らず人間も含めた動物は恐怖や不快感を強く感じます。それは周りに隠れる場所がなく、敵から丸見えだからです。
自然界で生きる動物は常に敵との脅威にさらされるため、敵との脅威を敏感に感じ、防衛行動に移す本能を持っています。それを司っているのが、扁桃体と呼ばれる脳の一部位です。
恐怖や不快を感じた扁桃体は、防衛のための信号を出します。それが興奮性の神経伝達物質(アドレナリンなど)を多量に分泌させるため、落ち着かなくなるのです。
人は周りに囲いがないところにはなるべくいたくない。だから、平場のラウンジは居心地が悪いのです。高齢者施設においても認知症の人は大部屋では落ち着かず、情緒不安定になる例をよく見かけますが、これも同じ理由です。
ちなみに、私が担当している東北大学スマート・エイジング・カレッジ東京では、多くの異業種企業とこんな議論を頻繁に行い、生命科学の知見を事業に役立てる場となっています。
タグ:アドレナリン, スマート・エイジング・カレッジ, 扁桃体, 第三の場所, 脳科学
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