研究開発部門

研究開発部門では、脳機能イメージング及び実験心理学的手法を核としながら、心を豊かに穏やかに加齢するための方法論的研究を、脳を直接研究対象とした脳科学研究、認知機能向上法開発のための認知心理学研究、認知症予防、メンタルヘルスを対象とした医学的研究、こころや死生観までを対象とした哲学・心理学研究・倫理学研究などを融合して推進します。

研究開発部門では、以下の3つの研究分野で研究開発活動を推進しています。

・応用脳科学研究分野(川島隆太教授)
・生体計測研究分野(西條芳文教授)
・神経電磁気生理学分野(中里信和教授)

応用脳科学研究分野

sact_contents_researchcenter5脳機能を維持・向上する、精神的な健康感を向上するための手法を開発研究するにあたり、認知神経科学の観点から、大脳の前頭前野(PFC)の機能に注目をしています。人間の前頭前野は、もっとも高次な認知機能を司る場所として知られており、健全な社会生活を送るために必要な能力が宿っています。特に作動記憶(ワーキングメモリー)や実行機能と呼ばれている機能(将来の計画・企画や意思決定、行動の選択や統制などの基幹となる機能)に注目をしています。

応用脳科学研究分野では、最新の脳機能イメージング技術や、認知神経科学、心理学、疫学などの知識を架橋融合した応用脳科学研究を展開し、健康な小児や成人、健全な社会生活を送っている高齢者の実行機能を向上させる原理を開発します。

1.生活介入研究

sact_contents_researchcenter6多くの方は60歳代くらいになると、心身のさまざまな機能の低下を自覚されると思います。しかし、実は、こうした心身機能、特に認知機能の低下は、20歳代30歳代からすでに始まっていることが知られています。この認知機能の低下の本体は、いわゆる流動性知能の機能の低下であり、その主因は作動記憶(ワーキングメモリー)や実行機能の低下であると考えられています。

これらの認知機能の低下に対して、最近の研究で、認知トレーニングと呼ばれる方法が有効であり、認知トレーニングによって、穏やかで健康な「心」の状態を保てることが指摘されています。例えばワーキングメモリートレーニングを行うと、ワーキングメモリー以外の認知機能も向上すること、本来生得的であると考えられていた流動性知能の容量が増加すること、などが次々に明らかになってきています。

センターでは、応用脳科学研究で開発した新しい認知トレーニング方法の有効性を、生活介入実験によって科学的に証明し、無害かつ有効なシステムを開発しています。

過去に行った生活介入実験の例としては、認知症高齢者に対する認知機能向上研究(Kawashima et al., 2005)があります。ここで開発したシステムは学習療法と名付けられており、読み書き計算が、認知心理学的に作動記憶(ワーキングメモリー)と実行機能を必要とするという事実、脳機能イメージング研究で実際に読み書き計算をすると、ワーキングメモリーや実行機能を司っている背外側前頭前野が活動するという事実を元にして、読み書き計算のドリル教材を産学連携体制で作成し、比較対象試験を行いました。

結果として、学習療法を行った認知症高齢者の前頭前野機能全般の改善が認められ、生活の質の向上も認められました。また、同様の読み書き計算による生活介入を、健康な社会生活を行っている高齢者に行ったランダム化比較対象試験(Uchida & Kawashima, 2008)でも、高齢者の全般的な認知機能や生活の質の向上に成功しています。

sact_contents_researchcenter7近年、ヤマハ発動機株式会社と行った産学連携共同研究では、オートバイの操作にはワーキングメモリーが必要であることを前提に、最
初に、オートバイを運転中に大脳左右半球の前頭前野が活性化することを携帯型光トポグラフィ試作機(日立製作所株式会社基礎研究所)による計測で証明しました。

また、健康な成人を対象として、普段の生活の中にオートバイ運転を取り入れるという生活介入を行うランダム化比較対象試験を行い、オートバイ運転を生活の中に取り入れることで、認知機能が向上し、社会生活上の精神的ストレスが軽減することを証明しています。

2.エンタテインメントとスマート・エイジング

当センターの活動と密接にかかわる学内組織として、東北大学エンタテインメント&スマート・エイジング・プラットフォームを2009年8月に設立しました。ここでは、ゲーム、テレビ、映画などのエンタテインメントが心身に与える影響を科学的に解析・評価をおこないます。

特に、個人がスマート・エイジングを具現化するために、エンタテインメントとどう関わるべきか、もしくは、そのようなスマート・エイジング社会を構築するためにエンタテインメントはどうあるべきかを検証しています。さらに、構築した理論を実践するための商品開発を産学共同研究にて行い、その効果を検証します。

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