認知症は学習療法で予防・改善できる/週刊『東洋経済』に掲載
週刊東洋経済 2018年10月13日号
週刊『東洋経済』10月13日号に、川島隆太教授のインタビュー記事が掲載されています。本号の特集は「認知症とつき合う ~最新治療から生活費まで徹底ガイド~」。
「認知症は学習療法で予防・改善できる」というタイトルで川島教授は「『認知症ゼロ』の世界が、やがて来ると思っている」と語られてます。
週刊『東洋経済』10月13日号より抜粋
認知科学、認知脳科学から見ると、脳機能の不全(特に大脳の機能不全)が認知症であると考えられている。
この失われた大脳の機能を活性化させれば生活の質は取り戻せるのではないかという考え方の下、症状改善の研究を行い、その具体的なアプローチとして学習療法を確立した。
多くの人を対象に、学習療法の生活介入実験をしたところ、どの年齢層であっても認知能力が顕著に伸びていることが分かった。この介入研究の成果は2005年に論文として発表しており、2015年にも米国のアルツハイマー病の人を対象にした研究で、同様の改善効果が見られると論文発表している。
一昨年、第三者が国内で学習療法の効果を検証したところ、認知症高齢者で学習療法を実施した人は、そうでない人とくらべ1年後の要介護度に「1」近い差が生じ介護費用削減につながることが明らかになっている。
認知症に対し、頼れる薬がまだない中で、これほど予防・改善の効果が科学的に証明された非薬物療法は、学習療法のほかにないと思う。
今後、認知症の予防・改善は「個別化」がテーマになっていき、個々人の体質と環境要因に応じた処置に変わっていくだろう。データ解析が進み個人の発症確率が推計できるようになれば、その人に応じた最適な処置ができるようになるのだ。
一人ひとりが意識をきちんと保ったまま最期の日を迎える世界を理想のゴールにし、研究をすすめていきたい。「認知症ゼロ」の世界が、やがて来ると思っている。
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