SAC東京5期コースⅠ第5回月例会 事務局レポート

生涯健康脳の維持-超精密脳検診と大規模脳画像研究との融合による認知症予防事業

コースⅠ第5回月例会は講師・瀧靖之教授によるテーマ「生涯健康脳の維持-超精密脳検診と大規模脳画像研究との融合による認知症予防事業」の講義です。

以下の構成で進められました。

1.脳科学からみる脳の発達と加齢
(1)脳の発達
(2)脳の加齢と認知症

2.脳科学を応用した認知症予防事業

脳の発達から加齢まで

脳科学において脳の発達から加齢までを対象としている研究は世界的に例がありません。さらに発達と認知症の関連性を探り心理学者とも連携しています。
瀧教授は多くの分野の企業と親和性があると思う、と講義の口火を切りました。

日本人の健康寿命を平均寿命へ近づけることが目標です。
要介護になる原因として認知症、脳の疾患が1/3を占め、高齢による衰弱まで広げると半数程度まで拡大します。
認知症患者数は現在の約500万人から2050年頃には1000万人へ推移し、10人に1人が認知症となる社会が予測されています。

脳の発達

エビデンスを得るために多くのデータが必要であり、脳画像が重要です。脳のMRI画像と、認知力、生活習慣、遺伝子との相関関係を調べています。

子供達の脳の発達

私たちが研究するまで子供の脳画像データはほとんどなく、宮城県の協力を得て「小児脳発達Project」に取り組みました。

脳血流量と年齢

子どもの脳は、後部(視覚、聴覚など)から前部(論理的思考能力など)に向かって発達が進みます。その研究から、何歳頃に何をすると、脳の発達が促進されて、色々な能力を効率良く獲得できるかが分かってきました。

脳の発達と獲得しやすい能力

親子の愛着形成は0歳から
読み聞かせは1歳から
知的好奇心は2歳から
運動や音楽は3〜5歳頃から
英語は8〜10歳頃から
他者とのコミュニケーションは小学生から中学生頃

脳の可塑性

それぞれに最適なタイミングがあります。しかし、その時期が過ぎても無理だということではありません。「脳の可塑性」によっていつから始めても能力は向上します。
ただし、若い人より年配の人の方が時間や手間が必要となります。

知的好奇心

子供達の知的好奇心を持たせることは大変重要です。親が楽しんでいる姿を子供へ見せることが重要です。子供の学習は模倣から始まります。身近な存在である親の模倣が重要となります。

生活習慣を絡める~平日の睡眠時間と海馬灰白質体積

脳の発達には睡眠の質が重要です。睡眠時間の長い子供たちの方が、記憶を司る海馬の体積が大きいことがわかっています。、睡眠は脳発達からみても非常に重要です。

朝食の主食と灰白質体積

朝食にご飯を食べている子供たちは、菓子パンを食べている子供たちよりも、脳の発達がより進んでいると考えられます。
血糖値がゆっくりと上がるグリセミック指数 (GI値=glycemic index) が低いものが有効であり、朝食をとらないことは論外です。

楽器演奏

楽器演奏も、脳発達を促進します。今日も一時間ピアノを弾いてきたという瀧教授のコメントには重みがあります。

親が子どもを褒めることの重要性

自分の子供を褒められる良好な親子関係は大切です。親が子どもを褒める頻度が高いほど後部島皮質の灰白質体積との正相関があり脳の発達にプラスであることが研究から分かってきました。逆に虐待は心身の発達を抑えます。

脳の発達と加齢

脳の輪切り画像を示し説明に入って行きました。健康であっても、脳は加齢とともに萎縮し機能が低下して行きます。同じ年齢でも差があり、これがどこからくるのか、どうしたら予防できるのかを解明する研究を行なっています。

飲酒

飲酒は脳萎縮の原因となります。比較的飲める人への影響は少なく、飲めない人の組織破壊性が高く、影響は大きくなります。

喫煙

喫煙も脳萎縮の原因となります。肺機能の低下が小脳などの脳萎縮を引き起こす可能性が明らかになっていいます。

肥満

肥満も脳萎縮の原因であり、中年期の肥満は高齢期の認知症リスクを増やします。しかし男女差があり、男性に多い内臓脂肪が良くありません。男性ほど運動するべきです。

飲酒

飲酒は脳萎縮の原因となります。比較的飲める人への影響は少なく、飲めない人の組織破壊性が高く、影響は大きくなります。

動脈硬化

脳萎縮の原因です。

うつ病

脳の萎縮の原因であり認知症リスクをあげます。軽度のうつでも前頭葉の萎縮がみられ、より進行すると海馬の萎縮も見られることが明らかになっています。

健康脳の維持と認知症の予防

それでは何をすれば脳に良いのか?瀧教授は丁寧に脳に良いことを一つずつ説明していきました。しかし、実践することは簡単ではありません。

運動

激しい運動よりも運動の習慣化が重要です。

趣味など知的好奇心を持つこと

それ自体が社会的要因である他者と触れる会う機会にもつながることを見逃していけません。コミュニケーションは脳をフルに使います。

食事

カロリー少し抑えめ、地中海食、和食などが有効です。
さらに睡眠、認知トレーニング等も認知症リスクを下げることが分かり始めてきています。

認知症の進展と脳内の変化

認知症は脳内にアミロイドβ、タウ蛋白がたまり時間をかけて発症します。
脳形態を調べることによって予兆をつかみ、発症を遅らせること、症状を緩和することができるようになりました。

主観的幸福度

最近では幸せな人は長生きすることが明らかになってきました。実際、主観的幸福度が高い程、平均余命が長く、その差は10年近くに達するとの報告もあります。
長生きした結果、幸せだと感じたのではなく、幸せだと感じていた方が長生きする、という可能性が高いのです。

脳科学を応用した認知症予防事業

瀧教授は、脳科学は様々な出口があり、ビジネスとの親和性が高い学問だと考えています。いかに大学と企業が組んで社会へ貢献するか、そのヒントを参加者に投げかけました。

例えば、認知症の経済的損失、世界で年間6040億ドル(約50兆円)、日本でも5兆円と試算とされ国民医療費の削減が課題です。個人レベルでも親が認知症になったら経済的損失が大きくなります。
予防が国の政策であり、特に発症予防が重要です。

課題解決に向けて

国立大学改革プランにおけるミッションの再定義は医学分野では超高齢社会に対応した健康長寿の実現です。
東北大学のミッション再定義は医工連携や加齢医学などの融合研究、大規模コホート研究です。
そして加齢医学研究所は自らの「強み」、「実力」を生かして脳加齢コホート研究、認知症超早期診断、認知力向上の実証が課題です。

センシング

スマート・エイジング学際重点研究センターを設立し、自宅にて、日常生活習慣の種々の情報を収集するセンシングを行う付加価値をつけた商品の開発、あるいは既存商品に付加価値をつけ生涯健康脳サイクルの確立を目指しています。

スマート・エイジング学際重点研究センターの特徴と発展性

  1. センシングによる健康増進ビジネスの大きな発展
  2. 最新の脳研究と日常生活情報の融合による生涯健康脳・認知症予防事業
  3. 介入等に関与する多くの業種との連携
  4. これらを融合したコンソーシアムの創出により、多くの商品、アイディアの創出
  5. 一般市民への認知症予防への大きな関心
  6. 健康寿命を伸ばすこと
  7. 国民医療費を下げる

上記のように、全ての業種は生涯健康脳維持に繋がります。
瀧教授は生涯健康脳推進事業への参画を呼びかけ講義を終了しました。

グループトーク後の質疑

村田特任教授のアイスブレイクからさらに講義の内容を深堀し、グループトークによって抽出された質疑は以下の通りです。

Q1.生涯健康脳サイクルでみる認知症予防ができない理由は、仕組みができていないからか、エビデンスが確立されていないからなのか?
Q2.診断研究を介さずダイレクトに脳をセンシングできる最新研究やデバイスはあるか?
Q3.脳の萎縮が送ると必ず認知症になるのか?
Q4.生涯健康脳を維持するために現状健康診断に脳画像診断が組み込まれていない理由と課題は?
Q5.ホルモンと幸福度は相関があるか?
Q6.飲酒、喫煙、肥満の脳への悪影響の度合いはどうか?
Q7.飲酒や食生活が脳に与える悪影響を与えるタイミングとそれらを測るMRI以外の身近にある方法は?
Q8.認知症に関するデータはアルツハイマー、脳血管障害系など全てを含むものなのか?
Q9.脳に睡眠の質は認知症に関係があるのか?
Q10.生活介入に代わって薬に求めることはあるのか?
Q11.社会参加を数値的にスマートに評価する方法はあるのか?
Q12.脳に悪いと言われているテレビ、スマホ、ゲームを好きな人がそれらをやめることは良いことなのか?
Q13.脳に悪いと言われているテレビ、スマホ、ゲームを好きな人がそれらをやめることは良いことなのか?
Q14.脳により良い楽器演奏は何か?
Q15.生活そのものを良くする介入についてビジネスのヒントになるものは何か?

以上

(文責:SAC東京事務局)

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